研究課題/領域番号 |
23760019
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
多田 和也 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (90305681)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 導電性高分子 / 無修飾フラーレン / 電気泳動堆積法 / 有機太陽電池 |
研究概要 |
本年度は、太陽電池用導電性高分子-フラーレン複合コロイド懸濁液調製法の確立と測定系の構築を中心に検討を行った。太陽電池用材料として有用であるポリ(3-アルキルチオフェン)系材料を使用した懸濁液調整法の確立を目指して検討を行ってきた。その結果、ポリ(3-アルキルチオフェン)をベースとするコポリマーであるpoly(3-octylthiophene-2,5-diyl-co-3-decyloxythiophene-2,5-diyl)が、非常に良好な懸濁液を与えることが判明した。まだフラーレンとの複合懸濁液を得るには至っていないが、H24年度に詳しく調査を行う予定である。測定系の構築に関連して、光ファイバー式太陽光シミュレータを導入するとともに、真空蒸着装置が不調となったため、油拡散ポンプをターボ分子ポンプに置き換えた。また、これまで既設の装置では蒸着が困難であったAl電極の蒸着法を見出した。これらの装置の試験の一環として電気泳動堆積法ではなくスピンコート法によるpoly(3-hexylthiophene)と可溶化フラーレンPCBMとのバルクヘテロジャンクション型太陽電池を試作したところ、特に最適化することなく約1%程度の光電変換効率を得ることができた。さらに、これまで有機太陽電池材料の分野では使用されてこなかった1,2,4-trimethylbenzeneという有機溶媒を用いることによって、これまでに得られなかった良質のpoly(3-hexylthiophene)と無修飾フラーレンとのバルクヘテロジャンクション膜を得ることができ、これが太陽電池材料として非常に有望であることを発見した。この成果について、査読つき学術雑誌への論文2報として報告した。その他、導電性高分子の電気泳動堆積における製膜過程を調べた報文を2報発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は電気泳動堆積法を利用して導電性高分子/無修飾フラーレン複合体を構築し、高効率の有機太陽電池を得る、というものである。電気泳動堆積法を用いる理由としては、材料利用効率が高いこともあるが、より決定的な理由として無修飾フラーレンを高濃度で溶解する適当な溶媒が見出されていない、ということがあった。「研究実績の概要」で述べたように、今回、1,2,4-trimethylbenzeneという有機溶媒が無修飾フラーレンを高濃度で溶解することを発見した。また、ポリ(3-アルキルチオフェン)をベースとするコポリマーであるpoly(3-octylthiophene-2,5-diyl-co-3-decyloxythiophene-2,5-diyl)が安定な懸濁液を与えることを見出した。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
poly(3-octylthiophene-2,5-diyl-co-3-decyloxythiophene-2,5-diyl)の懸濁液について、電気泳動移動度、材料利用効率、分散媒組成と膜の表面モルフォロジーとの関係などについて調査を行う。さらに、無修飾フラーレンとの複合膜を電気泳動堆積法とスピンコート法で製膜したものを用いた有機薄膜太陽電池を作成し、作製方法による光電変換効率の違いなどについても調査したい。また、1,2,4-trimethylbenzeneを溶媒とする導電性高分子/無修飾フラーレン複合体を使用した有機薄膜太陽電池について、作製条件の最適化を試みる。導電性高分子としてPoly(3-hexylthiophene)以外の太陽電池用途に最適化された高分子を用いて、さらなる光電変換効率の向上を目指すとともに、大面積素子の作製も試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
さらなる高効率化や大面積化を行った場合、現在使用している微小電流計では電流容量が不足する。このため、昨年低価格な商品が発表されたソースメータを購入する予定である。また、材料についても、これまで使用してきたフラーレンやpoly(3-hexylthiophene)、poly(3-octylthiophene-2,5-diyl-co-3-decyloxythiophene-2,5-diyl)に加えて、太陽電池用途に開発された高分子を購入する。次年度は取りまとめの年であるので、研究成果を論文として発表するとともに、応用物理学会をはじめとする国内会議に加えて国際会議にも積極的に出席して報告を行う予定であり、これらに必要な費用を支出する。なお、42,407円の残額が生じているがこのうち40,500円はJapanese Journal of Applied Physics Vol.51 03205への投稿料で年度内に納品済みであったのが、支払い書類送付の関係上3月末日までに入金できなかったものである。残りの1,907円は次年度にガラス容器などを購入するのに充当する予定である。
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