研究課題/領域番号 |
23760020
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
春田 正和 高知工科大学, 工学部, 助教 (90580605)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 酸化物高温超伝導体 / 高温超伝導薄膜 / パルスレーザ堆積 / Nd:YAGレーザ / 臨界電流密度 / 臨界電流特性 / 結晶欠陥 / キャリア密度 |
研究概要 |
液体窒素温度において実用レベルの電流輸送能力(臨界電流密度、Jc)を有する希土類系高温超伝導(REBa2Cu3Oy、RE123)線材の実現を目指して、RE123薄膜にナノサイズの柱状欠陥(ナノロッド)を導入するとともに、キャリア密度制御によるJcの向上を試みた。RE123薄膜の作製には、ランニングコストが安価なNd:YAGレーザを用いたPLD法を採用した。 Ba-Nb-Oナノロッドを導入したY123薄膜において、ナノロッド導入による臨界温度の低下を酸素アニール処理により改善させ、Jcの向上を図った。酸素アニールにより臨界温度はあまり変化しなかったが、Jcが向上した。また、磁場の印加角度によって、アニール前後でのJcの変化が大きく異なることを明らかにした。アニール条件の最適化により、更なるJcの向上が期待される。 エキシマレーザPLD法により作製したナノロッド導入RE123薄膜では、臨界電流特性が成膜温度によって変化する。本研究によりYAG-PLD法で作製したナノロッド導入RE123薄膜においても、臨界電流特性が同様の成膜温度依存性を示した。つまり、臨界電流特性の成膜温度依存性はレーザ光源に依存せず、PLD法で作製したナノロッド導入RE123薄膜に特有の現象であることを明らかにした。さらに、臨界電流特性の成膜温度依存性は、超伝導母相の希土類元素によって全く異なることを明らかにした。Ba-Nb-Oナノロッドを導入したY123薄膜では、成膜温度の増加に伴いJcが増加した。一方、Ba-Nb-Oナノロッドを導入したEr123薄膜では、成膜温度の増加に伴いJcが減少しており、Y123とは正反対の成膜温度依存性を示した。このことは、高い臨界電流密度を有するRE123線材を製造するためには、超伝導母相とナノロッド材料によりその都度、成膜温度を最適化する必要があることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノロッドを導入したRE123薄膜において、酸素アニール処理が臨界電流密度の向上に有効性であることが確かめられた。当初の予定ではRE/Ca置換したRE123薄膜を作製する予定であったが、ナノロッドを導入した超伝導母相の希土類種によって臨界電流特性の成膜温度依存性が異なることを発見したため、希土類元素と臨界電流特性の成膜温度依存性との関係を解明することを優先した。また、超伝導母相の希土類種により臨界温度の成膜温度依存性も異なることを明らかにした。現在、RE/Ca置換したRE123薄膜の作製を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ナノロッドを導入したY123およびEr123において、RE/Ca置換により臨界温度の低下を改善し、臨界電流密度の向上を図る。酸素アニール条件の最適化により、更に臨界電流密度を向上させる。透過型電子顕微鏡によるナノロッドの微細構造観察を行い、ナノロッド形態と臨界電流密度および臨界温度の関係を調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は試薬の使用量が予定より少なかったこと、冷凍機中心の測定を行ったため液体窒素の使用量が少なかったことなどから消耗品の購入額が少なくなった。この分の経費は今年度、特に試薬の購入に充てる予定である。また、共通設備としてFIB装置が導入されたため、TEM研磨剤等に充てていた経費はFIBの使用料に充てる予定である。
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