研究課題/領域番号 |
23760021
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
尾沼 猛儀 東京工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (10375420)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 表面再結合 / 表面プラズモン / 窒化ガリウム / 酸化亜鉛 / 再結合ダイナミクス / 半導体物性 / 結晶工学 |
研究概要 |
窒化物半導体発光素子の量子効率の改善策として、非・半極性面の利用による分極電場の抑制、ナノコラムなどナノ構造の利用、ナノホールなどのフォトニック構造の利用、表面プラズモンの利用等が挙げられる。本研究では、これまで窒化物半導体研究において殆ど注視されていなかった表面再結合過程に注目する。具体的には、分極の有無、表面/体積比が表面再結合過程に与える影響、表面プラズモンが再結合過程へ与える影響を、主にフォトルミネセンス(PL)法と時間分解フォトルミネセンス(TRPL)法を用いて調査し、発光効率向上に向けた素子設計の指針を提案することを目的としている。 窒化物半導体はc軸方向に反転対称性がなく同軸が分極軸となる。分極方向によりc面には、+c(Ga)極性、-c(N)極性の表面が表れる。GaN基板のX線光電子分光測定から、自発分極による電場により、+c表面では高エネルギー側に、-c 表面ではn型であっても低エネルギー側にバンドが曲がることを示した。そこで、表面におけるバンドベンディングの違いは、PL特性、すなわち表面再結合過程に影響するはずと考え、独自のモデルを構築した。本年度は、このモデルの定量化を図るべく、同試料の+c、-c表面に加え、非極性(m)表面の TRPL測定を行った。また、窒化物半導体と同じ対称性をもつ酸化亜鉛に対しても同様な調査を行い、モデルの妥当性を検討した。 PL強度と発光寿命は、明確な面方位依存性を示した。この結果を、表面と結晶内部(バルク)に対するレート方程式をもとに解析したところ、-c表面は+c表面よりも表面再結合速度が速いことが示唆された。また、-c 表面では低エネルギー側へのバンドベンディングが、少数キャリアである正孔に対し、ポテンシャル障壁として働くため、PL強度が増加する事が分かった。双方ともに、窒化物(有極性)半導体における特異な現象と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度当初に計画した内容は、ほぼ全て遂行できたと考えられる。当初は、プラズマ援用分子線エピタキシー法により成長した試料を使用する予定であったが遅れたため、酸化亜鉛基板を使用した。対称性が同じであるため、比較対象としては適している。また、キャリア密度が窒化ガリウム基板とは異なるため、同密度の影響に関して検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
主な課題:(1)GaNやZnO表面に金属薄膜や酸化膜を堆積し、バンドベンディングの変化が表面再結合過程に与える影響を調査する。(2)金属/窒化物半導体界面に発生する表面プラズモンが再結合過程に与える影響を調査する。 具体的には、GaN、ZnO表面に金や銀、アルミニウム等の金属薄膜を真空蒸着装置(構築中)により堆積する。また、異種の金属薄膜を積層し、プラズモン共鳴周波数の操作を試みる。共鳴周波数の観測には前年度に構築した分光システムを用いる。得られた結果と理論計算を比較し、素子へ応用する際の指針を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
プラズモン共鳴周波数を観測する際の、光源として使用するため、白色ランプを購入する。ケーブルや光学部品、蒸着源などの消耗品を購入する。研究成果を発表するため、国内外の会議へ参加する予定。
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