研究課題/領域番号 |
23760023
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
尾澤 伸樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60437366)
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キーワード | 表面反応 / 量子分子動力学 / 高速化 / アニオン / 伝導プロセス |
研究概要 |
アルカリ形燃料電池の高性能化のためには、電極表面で起こるアニオン(水酸基)生成プロセス及び電解質への伝導プロセスにおける諸化学反応を詳細に解析し理解する必要がある。そこで、金属触媒表面近傍におけるアニオンの伝導プロセスを評価するため、Pt(111)表面とアニオン間のポテンシャルエネルギーを第一原理計算を用いて計算し、拡散プロセスについて検討を行った。具体的には、アニオンが表面上に吸着した状態を始状態、表面内部に局在した状態を終状態として、LST/QST法から活性化エネルギーを評価した。その結果、常温では起こりえない活性化エネルギーの値を示した。ここで、近年のアルカリ形燃料電池の空気極には炭素担体上にPt及びAgのナノ粒子が担持された触媒が用いられていることがわかっている。今後は、ナノ粒子上のアニオンの挙動を解明することがアルカリ形燃料電池の性能を向上させる上で重要だと考え、Ptナノ粒子上におけるアニオンの生成・拡散プロセスを検討することにした。 また、Tight-Binding量子分子動力学法を活用して表面近傍におけるアニオンの拡散シミュレーションを行う。ここで、Tight-Binding量子分子動力学法は半経験的パラメータを用いた計算手法であるため、パラメータの調整を行った。今後、さらにパラメータの調整を行って、電解質材料における拡散シミュレーションを行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第一原理計算によって、空気極の金属触媒表面近傍におけるアニオンの拡散経路及び拡散障壁をアニオンの吸着及び拡散プロセスの解析する予定であった。しかし、研究を進めるうちに、近年のアルカリ形燃料電池の空気極には炭素担体上にナノ粒子が担持された触媒が用いられており、空気極のサブ表面領域における現象は伝導プロセスに重要でないことがわかった。また、空気極におけるアニオン生成プロセス及び電解質におけるアニオンの拡散プロセスはアルカリ形燃料電池の性能に大きく影響することがわかっている。そこで、アルカリ形燃料電池における発電性能の向上に貢献するためには、迅速にアルカリ形燃料電池におけるアニオンの挙動を解明する必要がある。そのため、当初の研究計画を変更することにした。
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今後の研究の推進方策 |
アルカリ形燃料電池の性能は、空気極におけるアニオンの生成プロセス及び電解質におけるアニオンの伝導プロセスに大きく影響される。そこで、アルカリ形燃料電池におけるアニオンの生成・伝導プロセスを明らかにするため、第一原理計算手法を用いて、以下の研究を行う。 (a) 空気極材料として、炭素担体上にPt及びAgのナノ粒子が担持された触媒が用いられている。そこで、本研究課題では、第一原理計算を用いて、Pt及びAg表面上における酸素分子と水の化学反応プロセスを解析し、アニオンの生成における活性の起源を検討する。そして、得られた結果から、高活性の空気極触媒に関する知見を得る。 (b) 電解質材料として、ポリフェニレンオキシド類のアニオン交換膜が用いられている。そこで、本研究課題では、第一原理計算手法を用いて、ポリフェニレンオキシド類のアニオン交換膜上のアニオン伝導プロセスを解析する。そして、得られた結果から、高アニオン伝導の電解質に関する知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、蓄積された計算結果のデータを保存するハードディスク、研究データをまとめた資料及び解析結果を示す動画ファイルを保存するDVD-Rを消耗品として計上している。旅費等の明細には、研究成果の発表を行うための通常の学術活動費用及び打ち合わせのための旅費を計上した。また、謝金等の項目には本研究課題に必要な参考資料の複写費用を、資料提供・閲覧として計上している。そして、研究成果を毎年論文に公表するため、論文投稿料をその他の項目に計上している。 収支状況報告書において次年度使用額が発生しているが、東北大学では3月31日までに支払を完了した額を記載するように全学において統一しているため、実際は次年度使用額ではなく4月支払分が記載されている。そのため、24年度の予算は使い切っており、次年度に繰り越す予算は0円である。
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