研究課題/領域番号 |
23760038
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
成島 哲也 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (50447314)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 走査プローブ顕微鏡 / 近接場光学顕微鏡 / 近接場光 |
研究概要 |
波長の大きさに制限されてきた光学測定の空間分解能は、近接場光の利用により、飛躍的に向上した。通常、この近接場光による測定では、近接場光照明領域だけでなく、その影響が到達する領域全体からの総和的な光学応答情報を検出する。本研究では、この総和的に得られる光学応答情報を、近接場光でさらに空間的に分解・検出し、光励起点からの関数として表現する。これにより、照明領域とその近傍に及ぶ微視的な光励起に対する応答の流れが可視化され、伝搬・緩和過程、異方性等の問題を直接的に議論することが可能となる。さらには、これらの知見をもとに、電子回路中の電子のように、光の流れを自在に操る新しい手法の創出を目指す。 初年度にあたる当該年度は、微小開口構造を持つ金属薄膜をガラス基板上に形成し、近接場光照射のために有効な開口テンプレートのデザインとノウハウの確立を行った。また、同時に検出プローブ走査用の三軸スキャナーステージを導入し、形成された開口からの近接場光照明領域とその近傍をイメージングする機構の開発も行った。このプローブ走査機構により照明用近接場光の評価を行い、試作した開口テンプレートの最適化を進めた。 開口テンプレートの試作では、金属薄膜としてアルミニウムを用い、電子線リソグラフィ法に加えて収束イオンビームも利用した。微小開口を探すために利用するマーカーのデザインや配置を何度か再検討した結果、漏れ光の影響がない近接場光照明が行えるようになった。イメージング機構については、これまで用いてきたシェアフォース制御に加えて、トンネル電流を検出してSTM像を取得できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にあたる当該年度は、照明用近接場光を発生する開口テンプレートの試作・最適化と検出プローブ走査機構の開発が目的であった。 開口テンプレートの試作では、金属薄膜としてアルミニウムを用い、電子線リソグラフィ法に加えて収束イオンビームも利用した。微小開口を探すために利用するマーカーのデザインや配置を何度か再検討した結果、漏れ光の影響がない近接場光照明が行えるようになった。イメージング機構については、これまで用いてきたシェアフォース制御に加えて、トンネル電流を検出してSTM像を取得できるようにした。 上述の通り、当初予定していた目的はほぼ達成できたと考える。さらに、次年度以降に予定していた有機薄膜や二次元π電子系薄膜(グラフェンなど)について、すでに一部の測定をスタートしており、当初の計画よりも若干順調に進行していると考える。 しかしながら、本研究は未知な部分も多分に含まれることから、試料によっては、都合の良い開口テンプレートを再度調整する必要があると予想する。
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今後の研究の推進方策 |
今後(平成24年度)は、平成23年度に作製した開口テンプレートと検出プローブ走査機構を用い、効率的な散乱・発光と光励起の伝搬が期待できる試料に照明用近接場光を照射し、その照射領域と近傍の空間分解近接場イメージングの測定を行う。 開口テンプレート上への試料の配置は、コロイド溶液などを滴下し、単純乾燥させるか、スピンコートなどの方法によって行う。単一分散の微小球(ポリスチレン球や金微小球)の場合、二次元で均一に自己組織化した試料を作成できるので、まずは開口直上及び近傍に作成できた二次元自己組織化試料を利用し、テスト測定を行う。 信号検出を容易にするために、当面、色素ドープしたものを利用するが、検出方法等が確立した後は、色素なしの同構造の測定を行う。(結果は違ったものになるかもしれないが、) この色素なしの場合の測定を通して、散乱強度や発光の小さい試料でも測定が行える方法を見出す。具体的には、開口への光導入方法や検出プローブなどを再検討する。 検出プローブに関しては、開口径の調整や、収束イオンビーム等による追微細加工により対応する。実際の測定を進めるに当たってはその他の要因も現れると思うが、これらに対しても柔軟に対応し、十分な感度で測定が行えるよう工夫を行う。これらをクリアした上で、その他の金属・半導体微粒子を含んだ有機薄膜、色素分子を吸着させた一次元構造体(分子)、貴金属の微粒子、二次元π電子系薄膜(グラフェンなど)、液晶薄膜などを対象に、光励起領域近傍の分光イメージング測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の空間分解近接場イメージングの測定開始当初は、光学配置としては単純な透過光測定を行うが、後半では白色光源と分光学的な測定を組み合わせ、どの位置で起きているかだけでなく、近接場局所光励起に伴い、どのような波長の光が選択的に散乱・発光に寄与しているかと、その伝搬・緩和の様子についても調べる。そのため、設備備品費として、ファイバマルチチャンネル分光器を計上する。これは、開口プローブからの光信号検出用に、既設のモノクロメータに加え、もう一台分光器が必要なためである。その他、消耗品(光学部品・電子部品)とプローブ作製のための研究打合せ、国内での研究成果発表、論文誌上発表のための印刷費を計上する。
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