本研究では、我々がこれまで開発した世界最高レベルの収束度を持つ陽電子マイクロビーム装置に、電子ビーム誘起電流(EBIC)測定回路を付加することで、半導体試料に存在する欠陥の評価を行うことを目的としている。H23年度には、すでに完成している陽電子マイクロビーム装置に対し、絶縁ステージ上にマウントした試料にバイアス電圧を加えつつ高感度電流測定が可能な計測システムを接続し、電子ビームを使うことでEBIC法で欠陥分布と形状を検出しながら、同時に陽電子消滅法で欠陥種を同定することで欠陥構造を知ることが出来るシステムを構築した。H24年度では、これを用いて実際の試料の測定を行った。試料にはn型およびp型のFZ-Si基板を用い、これを熱酸化法により40nm程度のSiO2膜を表面に形成したものを用いた。これに対しマスキングを施すことで部分的にHe照射(200keV)を行い欠陥を導入した。照射後に金蒸着によりMOS構造を作成した。この試料に対し、電子ビームおよび陽電子ビームを走査することでEBICおよび陽電子消滅パラメータの二次元分布イメージを取得した。いずれの測定においても欠陥領域でコントラストが発現した。H25年度では、EBIC法で見られるコントラストがn型及びp型試料で同様であったのに対し、陽電子法ではp型のコントラストが減少した理由を探るため、バイアス電圧を変えた測定を行い、これが欠陥の荷電状態の違い由来すると考えるに至った。更に高精度な実験を行うためには現状の装置では陽電子ビーム強度が不足していることが判明し、より高強度な陽電子ビームを利用できる大型施設の利用を検討した。
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