最終年度においては、以下の3点に関して検討を行った。 1. 高い光学非線形性を有するZnOとイオン液体界面に生じる電気二重層を利用することで、ZnOに非常に強い電界を印加し、電解誘起二次高調波発生(EFISH)の測定を試みた。ZnOは、二次高調波発生の起源である二次の非線形光学定数、EFISHの起源である三次の非線形光学定数、共に高い値を持つため外部電界によって二次高調波発生を制御できる新規非線形光学デバイス実現への可能性を有する。メーカーフリンジ測定系の感度不足のため明確なEFISHの観測はできなかったが、外部電界印加による新たな位相整合手法を提案することができた。 2. TiO2フォトニック結晶導波路における自己位相変調効果の増大については、構造を最適化することで広帯域なスローライトを実現できる事を示した。平面波展開法を用いて、7 nm程度の動作波長帯域と20程度の群屈折率を持つフォトニック結晶導波路を設計した。作製においては、メタルマスク、ドライエッチング条件等の最適化により直径100~200 nm程度のホール構造を持つTiO2フォトニック結晶構造を精度良く作製できることを示した。 3. 量子光学への応用を目的としてTiOチャネル導波路の分散制御について検討した。波長800nm付近で異常分散となる構造の作製に成功した。本構造は、TIO2導波路の新たな可能性を示すものである。今後は、フォトニック結晶ファイバー中でしか観測できなかった現象を微小な導波路チップ上で実現するために海外研究機関との共同研究を推進していく。
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