本研究では、分子スケールの電気的摂動効果をプローブとした全く新しい原理に基づく近接場光学顕微鏡を開発することを主たる目的としている。研究2年目で最終年度である平成24年度は、以下に示すように、コンダクティング原子間力顕微鏡(AFM)とラマン顕微鏡を組みあわせた近接場ラマン顕微鏡の開発を完遂し、近接場振動シュタルク分光測定を行った。 1.前年度に試作した近接場ラマン顕微鏡にガルバノミラーシステムを組み込んだ。これによって、レーザー光走査によって金属探針先端にレーザー光を高精度でかつ高速に集光照射することが可能となり、近接場ラマン分光測定の測定精度の向上を図った。 2.作製した近接場振動シュタルク分光システムを用いて1-プロパンチオールの自己組織化単分子膜の測定をおこなった。単分子膜は銀薄膜にチオール溶液を浸漬して作製した。金属探針は、従来の近接場ラマン分光測定で使用している銀探針では導通が取れなかったため、接着層をシリコン製カンチレバープローブに塗布することによって導通を確保した。波長532nmのCWレーザーを用いて近接場振動シュタルク分光測定を行った結果、4cm-1/Vのシュタルクチューニングレートを得た。 以上、2年間の研究推進により、コンダクティングAFMとラマン顕微鏡を組み合わせた近接場振動シュタルク分光装置を開発し、その原理実証をおこない、本顕微鏡の有用性を示した。近接場振動シュタルク効果によるスペクトル変化を検出することで空間分解能の向上も期待される。
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