研究課題/領域番号 |
23760052
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
山田 逸成 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (40586210)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ワイヤグリッド偏光子 / 赤外線 / カルコゲナイドガラス / インプリント加工 |
研究概要 |
【研究の目的と23年度の目標】赤外用ワイヤグリッド偏光子の基板として用いられるフッ化物は難加工性、Ge基板は高価であることが問題とされている。さらに、数百nm周期の金属格子を要するため、非常に高価になってしまうことが大きな課題であった。この課題を解決するため、本研究では赤外透過性と成型性に優れたカルコゲナイドガラスを基板として使用し、プロセスが単純なインプリント加工技術を活用することにより、赤外用ワイヤグリッド偏光子の製作を行うことを目的とした。 平成23年度は数百nm程度の狭周期のパターニング技術を確立し、直径5mm以上のモールド表面に周期400nm程度の格子構造を形成することを目標とした。【実験と結果】赤外域で高い偏光特性を得るためには、使用波長よりも充分に短い周期をもつ金属格子構造を形成することが必要である。このような微細周期構造をインプリント加工によって形成する場合、モールドの作製が重要となる。モールド基板は、高温でも充分な硬度をもち、加工性に優れたSiCを使用した。モールド作製には二光束干渉露光とドライエッチングにより、SiC表面に周期500nmの尖鋭状の格子構造を形成した。この基板をモールドとして、カルコゲナイドガラスへのインプリント加工を行った。使用した五鈴精工硝子(株)製のカルコゲナイドガラスはヒ素やセレンのような有毒元素を含まず(Sb-Ge-Sn-S系)、透過波長域0.85~11μmといった特徴を有している。253度に加熱した状態でSiCモールドをカルコゲナイドガラスに押し当てた。結果として破損することなく、均一に転写することができた。その表面にAlを斜め蒸着により、Al格子を形成し、偏光特性を測定した。5~9μmの波長域において、TM偏光(格子に対して垂直方向の偏光)透過率60%、消光比は20dB以上であり、製品レベルに達する性能を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度の計画では、モールドの作製を行うことを目標として設定していたが、二光束干渉技術を立ち上げることができたこと加え、モールドの作製、カルコゲナイドガラスへの構造転写、Al蒸着によるワイヤグリッドの作製の一連の工程を行うことができた。偏光機能としても5~9μmの波長域において、消光比20dB以上の性能が得られ、製品レベルに達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
カルコゲナイドガラスの屈折率は2以上であるため、反射損失が大きくなることが課題として残っている。改善策として、金属格子の裏面に反射防止構造を形成し、透過率を高めることが必要と考えている。それゆえ、赤外域で反射防止として機能する構造を設計し、そのモデルに基づいたモールドを作製することが24年度の目標である。
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次年度の研究費の使用計画 |
光学部品、ステージ、パターニングに必要なレジスト、基板洗浄に必要な薬品などの消耗品を購入する。また、国内および国際学会での発表における渡航費や、論文投稿費などにも費やす予定である。
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