研究課題/領域番号 |
23760053
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
行方 直人 日本大学, 理工学部, 助手 (20453912)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 量子もつれ交換 / 通信波長帯 |
研究概要 |
本研究では、高効率単一光子検出器と高純度偏光量子もつれ光子対光源の開発、それらを用いた高忠実度量子もつれ交換技術の確立を研究目的としている。本年度は、単一光子検出器の高性能化、高純度偏光量子もつれ光子対源の開発を実施した。これまでに、化合物半導体素子(InGaAs/InP なだれフォトダイオード、以下APD)を用いた高速単一光子検出を開発してきた。本検出器は、正弦電圧ゲート動作型であり、1GHzを超える繰り返し動作において、検出効率10 %、暗計数確率~10の-7乗、アフターパルス確率~2 %を得ていた。今回、検出不可能時間の拡大を1μs(最大光子計数~1MHz)とすることで、高効率化に伴うアフターパルス確率の増加を抑圧し、最終的に、アフターパルス確率~3 %、暗計数確率10の-6乗以下へ抑えたまま検出効率を20 %まで高めることに成功した。本結果は次年度実施予定の量子もつれ交換実験に適した性能が得られたことを意味する。Type-II型疑似位相整合ニオブ酸リチウム(バルク)(以下Type-II PPLN)を用いて相関光子対の発生実験を実施した。Type-II PPLN中のパラメトリック下方変換過程の励起用レーザーとしてフェムト秒モードロックレーザーを用いた。モードロックレーザーの繰り返し周波数80MHzは遅延マッハツェンダー干渉計によって16逓倍され、1.28 GHzへ高められた。これに伴い、光子検出器の制限電圧ゲートの周波数も1.28 GHzとした。光パルスタイミングとゲート印加タイミングの同期はモードロック信号を利用することにより実現した。以上により、高繰り返し可能な実験系が実現し、量子もつれ交換実験へ向けて十分な発生レート~10の7乗(最大)を確保できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響による実験的研究活動の中断、既存設備であったチタンサファイアレーザーの不具合等が発生し、交付申請書の目的、目標をすべて達成しているとは言えない。復旧が完了した現在、研究目的完全達成へ向け全力で挑んでおり、次年度中には、研究開発の変更なく目標を達成できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
現時点において、光子検出器の高性能化および相関光子対の発生系の構築までを完了しており、進捗はやや遅れているものの得られた結果自体は当初の期待通りである。研究開発の変更はせず、成果物の統合実験である量子もつれ交換実験を実施し、次年度中に最終目標を達成できるよう努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
量子もつれ交換実験を実施するために必要なGHz帯マイクロ波部品、電子部品、その他に不足している光学部品、ファイバ光学部品を購入する。また、論文執筆のための費用へも割く。研究成果に関して応用物理学会、量子エレクトロニクス関連の国際会議などへの発表を2回程度予定している。
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