研究課題/領域番号 |
23760057
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 栄治 独立行政法人理化学研究所, 緑川レーザー物理工学研究室, 専任研究員 (80360577)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | レーザー / 高次高調波 / アト秒パルス |
研究概要 |
二波長合成レーザー電場の高出力化と,それらを用いた高次高調波発生実験を行い広帯域高且つ高効率化な高調波発生研究を行った.二波長合成レーザー光の発生には,チタンサファイヤレーザーから発生した800 nm 光(30 fs) と光パラメトリック増幅 により出力されたシグナルIR 光(35 fs) を時間・空間で合成する事で発生させた.二波長レーザー法における高次高調波発生の最適化条件の探索を行った.最適化パラメーターとして二波長レーザー光の電場構造,及び媒質条件を用いて,発生する高次高調波の高輝度化を行った.それら予備実験により得られた知見を元に,高調波発生装置を既存の装置をベースにして10倍以上スケーリングアップし,次年度のパルス幅計測に向けた実験装置の構築を行った.高調波発生媒質にゼノンガスを用いることで,本申請課題の発生目標値であるマイクロジュールクラスの高調波出力を達成することに成功した.高調波スペクトルのカットオフ近傍を Sc/Si 多層膜ミラーにより選び出すことにより,時間幅にして 500 アト秒の単一パルスが得られると考えられる.またプラトー部においては準連続スペクトルが得られており,SiC ミラーで広帯域にスペクトルを切り出すことで 350 アト秒程度の時間幅を持つ高調波パルスが得られる可能性がある.得られた高次高調波の将来的な応用研究を見据えて,コヒーレント光を用いた物体の微細イメージング法の検討を計算機シミュレーションにより行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題において大きな目標であった,単一アト秒パルスの高出力化に成功し,マイクロジュールクラスの出力が得られている.また発生条件に位相整合技術を取り入れることで,高効率化にも成功した.高調波の高出力化が本研究の最も大きなキーポイントであった点を考えると,研究目標はほぼ達成したと考える.また次年度の計画を前倒ししてパルス幅計測装置の構築を完了しており,当初の計画以上のスピードで研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
実施計画に基づき開発された高出力高調波光源の時間幅評価を行う.パルス特性の評価には原子・分子の非線形過程を用いる.実施計画では He 原子の二光子過程を用い,それらを光電子分光することで時間幅の計測を行う予定であった.しかし使用する高調波波長と媒質の非線形感受率を考慮した結果,分子ターゲットを用いたイオンの質量分析の方がより信号を計測しやすい事が判明した.よって,高調波の時間幅測定には二原子分子を非線形媒質として用い,発生したフラグメントイオンを時間飛行型の質量分析することで評価を行う.飛行時間型の質量分析装置はすでに立ち上げ済みであり,すみやかに実験に移れる段階にある.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は他予算からも本研究に対して補助が得られたため,本科研費から使用する予算を低く抑える事ができ,結果722,911円の余剰が発生した.初年度に研究に必要な大型物品は手配し終わったため,本年度は真空パーツ,高調波用の光学部品,媒質ガス等の消耗品に研究費を使用する予定である.
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