高度情報化社会において、光信号による高速情報処理のための光回路が望まれている。光回路の普及には小型集積化が重要な課題であり、その課題解決の手段として微小球マイクロオプティクスの活用が期待される。そこで本研究では、微小球マイクロオプティクスの活用に向けて、新奇オンデマンド作製法開発を目指し、レーザー誘起ドット転写法の透明酸化物への適用と高度化を図った。本手法では、透明支持板上に成膜した酸化物膜原料を用い、透明支持板側からレーザーパルスを照射し、対向基板上へ微小球をオンデマンド作製する。しかし当該研究ターゲットである酸化物の場合、金属に比べ、レーザー照射による原料膜の破砕が起こるなど転写のプロセスウィンドウが狭小化し、また転写物の形状制御に課題が残っていた。 H23年度は、レーザー誘起ドット転写法の酸化物への適用を進めるため、実験および有限要素法による伝熱シミュレーションの両面から、本手法の材料物性・照射パラメータ依存性解明に取り組んだ。その結果、レーザー照射時の原料膜内高温分布シミュレー ションに成功。比熱の大きい物質や熱伝導率の小さい物質で膜厚方向温度の均質化に時間がかかる様子が明らかとなり、酸化物では比較的大きな熱応力の発生が予想されるなど、応力発生などの膜破砕を抑制できるレーザー照射条件などの検討に有用な情報を得ることが出来た。 最終年度は、前年度モデル化に成功した原料膜内高温分布シミュレーション結果をもとに、透明導電性酸化物として有用なITOをモデル材料にレーザー転写条件の最適化を図った。その結果、酸化物において、転写物のサイズ・形状が顕著な原料膜依存性を示すことを見出し、原料薄膜化により、課題であった原料膜破砕を起こすことなく、レーザー集光径の約10分の1まで微細化した直径約1-3ミクロンの微小球を調製でき、さらにその自在配列によるオンデマンド堆積を実証した。
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