固体高分子形燃料電池(PEFC)の性能改善に向けた本研究の平成24年度の成果として,前年度の研究成果で酸化物系の触媒担体を用いた酸化物電極触媒担体を利用することで,性能が改善することが明らかとなった.その結果の裏付けとして,実際に調製を行った触媒の構造物性値データを反映させた詳細な電池全体の性能と水管理特性の連成計算を行い,低加湿条件で運転が可能になることが確認された.その要因として,水管理において重要となる空気極側での生成水が電流量の増加に比例して増える点を利用し,アノード側にその生成水の輸送を促進するためのパスを構築したことが原因として考えられる.現在,実験でその材料の耐久性を向上させることが検討課題の一つであり,材料を変更する,もしくは新たに材料を調製することで耐久性の向上を目指したが,この耐久性の向上は,今年度達成することはできなかった.格子ボルツマン法を用いた数値解析であるが,従来の有限要素法ソルバを利用した熱・流体・電気化学反応を考慮した電極反応の数値解析結果と比較し,計算を行った結果が,従来手法と同等の計算結果を得ることができた.しかし,初期の段階でそれ以上の優位性が本研究では確認できないという知見が得られたため,上記の計算も有限要素法をベースに計算を行っている.また,現在,PEFCのMEAを冷却ホルダで支持してFIB-SEMデュアルビーム観察装置を用いて3次元で構造を観察し,CADデータとして計算に応用することについては,現在サンプルの加工とデータ取得を進行中であり,反映でき次第,発表予定である.
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