本研究では、超高サイクル疲労における特有の現象である粒状領域の形成過程ならびに形成機構を明らかにすることを目的とする。さらに、内部破壊における粒状領域形成を材料に関わらず統一的に説明可能な機構を示す。材料内部のき裂周囲の環境が真空環境に類似しているという考えの基に、真空中で微小欠陥を付与した試験片を用いて疲労試験を実施した。そして、微小欠陥からの疲労き裂の連続的な観察と試験後の破面解析を行った。 本年度はチタン合金(Ti-6Al-4V合金)を対象として、試験片の平行部に大きさが30マイクロメートルの微小欠陥加工を施した。そして、真空中で引張-引張の荷重条件の下で微小欠陥から疲労き裂を発生させ、長さが300マイクロメートル程度になるまで進展させた。この時、疲労き裂の長さを計測し、真空中での疲労き裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係を得た。その後、大気中ならびに真空中において種々の荷重条件の下で破面を繰返し接触させた。破面観察の結果から、(1)真空中において破面を繰返し接触させることで組織よりも微細な凹凸の領域(粒状領域)が形成されること、(2)圧縮負荷が加わることにより凹凸の大きさが小さくなること、すなわち粒状領域の形成が促進されること、(3)繰返し接触時に圧縮-圧縮の条件においても粒状領域が形成されること、(4)大気中では粒状領域は形成されないこと、などが明らかになった。 一方、別途行われた炭素鋼(S25C)を対象とした実験から金属材料表面に圧縮負荷を長期間にわたり繰返し付与することにより、表面直下に微細組織が形成されることが明らかになった。本実験においても破面同士が接触することにより、同様の現象が起きていたと考えられる。さらに真空中においては破面同士が接触する際に凝着が生じ、微細化された組織内において分離が生じた結果、粒状領域が形成されたと考えられる。
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