以下に本年度の成果を示す. 1.CFRPは内部の炭素繊維の構造によって電気的異方性が変化し,励磁コイルによって発生する渦電流と検出磁界の分布は複雑になる.CFRP中の渦電流と,検出磁界の分布の関係を定式化した.これにより,これまで導出されてこなかった渦電流と検出磁界の分布の解析式を導出し,CFRPの複雑な電気物性の電磁場への影響を解明した.導出した電磁場の解析式は有限要素法解析と比較することでその有効性を確認した. 2.昨年度までは試験片底面をホットプレートで加熱し,その反対側に設置した励磁コイルと検出コイルの組み合わせで温度分布を測定していた.今年度は渦電流の発生に利用する励磁コイルを誘導加熱用コイルとしても利用して試験片を加熱し,その後に励磁コイルと検出コイルを用いて温度分布を測定する方式に変更した.また,加熱・励磁用コイル,検出コイルを一つの薄いシート状に埋め込んで一つの検査シートとし,融着の際に使用するホットプレスのプレスの内側に埋め込めるようにした.励磁コイルの内側に複数の検出コイルを配置することで,検査シート内における損傷の発生位置を特定できるようにした. 3. 1.の解析式を用いて励磁コイルに印加する電圧の周波数等の試験条件を決定し,模擬融着不良を導入した試験片を用いて不良部の検出実験を行った.まず,加熱をしない従来の渦電流探傷法で検査をした結果,不良部と健全部でデータに差異が生じず,検出ができないことが分かった.次に本研究の提案手法である加熱と渦電流試験を組み合わせた方法を適用した結果,不良部の上面が高温のスポットとなり,炭素繊維の導電性は高温になるほど大きくなることから,不良部の上面のみが高伝導率スポットとなり,渦電流試験により損傷箇所を特定することに成功した.
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