研究課題/領域番号 |
23760090
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
尾崎 伸吾 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20408727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 設計工学 / トライボロジー / 構成式 / 接触問題 |
研究概要 |
本研究では,「ミクロ-マクロ」スケール間の動的摩擦試験結果を精査することで,すべり摩擦挙動の微視的プロセスを反映した内部状態変数とその発展則の基礎付けを行い,摺動面における速度・状態依存性摩擦構成モデルを構築する.次に,構築した摩擦構成モデルを実装することで,有限自由度の材料の変形と摩擦接触挙動に関する動的連成有限要素解析手法の確立を目指す.当該粘度においては,既に作製している摩擦試験装置を高精度化し,摺動面の材料性特性・表面粗さ・すべり速度・負荷条件などがすべり摩擦挙動に与える影響について,乾燥および境界潤滑下での動的摩擦試験を実施した.ここで対象とする材料には,工学の現場で振動や騒音,摩耗が問題となるエラストマー,ペーパー材,ガラス材,高分子材などを重点的に採用した.測定項目としては,摩擦力-すべり変位関係の経時変化を基本とし,データの収集・整理に努めた.また,既に提案している摩擦構成モデルの応答特性と摩擦試験結果との比較を行い,提案モデルにおける内部状態変数の発展則を規定するとともに,その妥当性を実証した.さらに,提案摩擦モデルを有限要素法に導入し,有限自由度の材料の変形と摩擦接触挙動に関する動的連成有限要素解析手法として確立するための基盤を築いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的摩擦試験を実施し,スティックスリップ運動に代表される速度依存性すべり摩擦現象のデータの収集に努めた.対象とする材料には,当初の予定通り,工学の現場で振動や騒音,摩耗が問題となるエラストマー,ペーパー材,ガラス材,金属材,汎用エンジニアリングプラスチックなどを採用した.他方,既にフレームワークを提案している速度依存性摩擦モデルの妥当性を検証するために,摩擦試験装置を模した1自由度質点系の運動方程式にモデルを実装し,スティックスリップ運動の比較を行った.その結果,様々な動的条件(質量,剛性,駆動速度)や材料条件の下での摩擦力の時系列応答やスティックスリップ周期など各種データについて,摩擦モデルを導入した数値シミュレーションを用いることにより再現できることを示した.また,人工的なテクスチャー加工や微小凹凸の大きさ・配向など,摺動面のモルフォロジー特性を反映した異方性摩擦挙動についても摩擦試験および数値シミュレーションを用いた同様の検討を行い,速度依存性異方性摩擦モデルの妥当性も示した.このように,当該年度の研究項目は概ね達成できているといえる.さらに,次年度の研究計画の一部を繰り上げて実施した.具体的には,提案摩擦モデルを有限要素法に導入し,有限自由度の材料の変形と摩擦接触挙動に関する動的連成有限要素解析手法として確立するための基盤を築いた.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして,二種類の具体的な接触境界値問題の解析に取り組む.解析結果,実験結果および既往の報告との比較・検証を通じて,有限自由度の材料の変形と摩擦接触挙動に関する動的連成有限要素解析手法として確立する.具体的な研究プロセスは以下の通りである.1) これまでに申請者は,接触問題の有限要素法解析プログラムを独自に開発しているが,至便性や産業界への波及効果などを鑑み,汎用ソフトのユーザーサブルーチン機能を用いて提案モデルを実装する.なお本研究項目は前年度から試行的に実施する.2) 摩擦試験で得られたモデルパラメータを用いて,有限自由度の変形と速度依存性すべり摩擦が連成する下記現象の有限要素解析に取り組む. (1)半球状エラストマーの斜め衝突時における変形とスティックスリップの連成現象および応力波の伝播現象; (2)ディスクブレーキのパッド材を模した回転接触時の振動・鳴き現象. 得られた結果を取りまとめ,最終的に,提案解析手法が最適設計,最適摩擦制御,長寿命化などの検討に適用可能であることを示し,新しいアプローチ法として国内外に発信する.
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次年度の研究費の使用計画 |
摩擦試験を継続し,データの収集に努める.そのため,供試材料の購入費用や治具製作費用等に220,000円を計上する.国内会議(日本計算工学会@京都市)ならびに国際会議(ACCM@サンクトペテルブルグ)にて研究成果を発表する予定である.そのための旅費に,計280,000円を計上する.国際誌へ研究成果を二報投稿する予定である.そのための英文校正費用に謝金を70,000円計上する.学会参加費用について,その他130,000円を計上する.
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