最終年度は,提案した速度・状態依存性摩擦モデルおよび異方性摩擦モデルについて,実験結果との比較を通じてその妥当性を検証した.さらに,提案摩擦構成モデルを有限要素法に実装し,具体的な摩擦接触境界値問題の解析を通じて,新しい解析手法としての確立に取り組んだ. 研究期間全体を通じて,当初の目的であった「ミクロ-マクロ」スケール間の動的摩擦試験結果を精査することで,すべり摩擦挙動の微視的プロセスを反映した内部状態変数とその発展則の基礎付けを行い,摺動面における速度・状態依存性摩擦構成モデルを構築した.さらに,微小表面のテクスチャー構造を反映した異方性摩擦モデルへの拡張にも成功した.こらの提案モデルの妥当性は,ボード紙,各種鉄鋼材ならびに汎用エンジニアリングプラスチックなどを対象としたスティックスリップ運動の試験結果との比較や異方性すべり摩擦現象との比較を通して示されている. 次に,構築した摩擦構成モデルを実装することで,有限自由度の材料の変形と摩擦接触挙動に関する動的連成有限要素解析手法の確立にも取り組んでいる.本成果により,システムの強度・剛性と摺動面のトライボロジー特性を同時に検討することが可能となり,機械システムの設計・管理・制御手法のさらなる高度化が期待できる. なお,得られた成果は,International Journal of Solids and StructuresおよびTribology Internationalに掲載された.
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