研究課題/領域番号 |
23760096
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡野 成威 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00467531)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 材料設計・プロセス・物性・評価 / インプロセス制御 / 残留応力 / 構造健全性 |
研究概要 |
各種の鋼構造物や製品の品質に影響を及ぼす溶接残留応力のインプロセス制御手法とそれによる健全性向上に向けた検討を目的として,数値解析的アプローチと実験的アプローチを適切に組み合わせながら,主として,溶接残留応力発生メカニズムの理論的検討,温度場制御による残留応力低減手法の開発・評価,高精度残留応力計測システムの開発・評価,について研究を進めた.まず初めに,溶接残留応力発生メカニズムの理論的検討として,数値解析を用いて,残留応力の発生原因となる固有ひずみの発生特性について検討し,残留応力の発生を支配する要因について考察した.温度場制御技術による残留応力低減手法の開発・評価として,上述の考察結果に基づいて,残留応力低減に有効な温度場制御の考え方について数値解析によって検討を追加した.さらに,これらの数値解析結果を踏まえて,水冷トーチを用いて実験的に残留応力低減効果を検討した.その結果として,水冷トーチを用いた温度場制御技術によって残留応力の低減効果が得られることを確認することができた.一方,これらの残留応力低減効果を評価する手法の構築に向けた高精度残留応力計測システムの開発・評価として,X線回折装置を用いた応力測定法,インデンテーション装置を用いた応力測定法について検討を進めた他,従来から広く用いられている破壊法(応力弛緩法)による残留応力測定も併せて実施した.これらの応力測定結果は,必ずしも厳密に一致するものではないのが現状ではあるが,応力分布の傾向は良好に一致する結果を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶接残留応力の発生メカニズムについて検討を行い,それに基づいて,残留応力低減に有効な温度場制御のあり方の提案とその実験的検証について,有意義な成果を得る事ができた.以上の点については,当初の予定通りか,もしくは,当初の計画以上に研究成果が得られていると考えている.一方で,これらの応力評価に際して,高精度計測システムについても併せて検討を進めているが,これらに関しても,残留応力の分布傾向がおおむね良く一致しているとも言えるが,溶接部における応力測定精度については,もう少し改善の余地があるとも考えられる.構造健全性の評価・向上に向けて,必要十分な測定精度レベルを確保することが第一優先であるといえるが,X線応力測定法やインデンテーション法による応力測定精度の更なる向上に向けては,これまでの成果をさらに発展させるために次年度も継続して検討を実施したいと考えているため,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,これまでに構築した温度場制御によるインプロセス残留応力低減手法を,実機を想定した寸法や形状などを踏まえた大型鋼板へ適用することについて検討を進めたいと考えている.併せて,温度場制御によるインプロセス残留応力低減手法を適用した継手の性能評価についても,当初の予定通り,検討を進めて行きたいと考えている.以上のように,基本的には当初の予定通りに研究を進めていく予定であるが,高精度残留応力計測システムの精度向上に向けた検討もこれまでのものを更に発展すべく,検討を継続していきたいと考えており,研究における作業・評価手順や供試材料の消費等の点も考慮して.まずは,高精度残留応力計測システムの開発・評価と温度場制御による残留応力低減手法の実機適用,に向けた検討を進めて行きたいと考えている.また,溶接残留応力制御継手の継手性能評価については,従来から用いられているような手法を適用して評価を進めて行きたいと考えていたが,インデンテーション法などを用いた非破壊的な新しい評価手法も提案されているようであり,可能であれば,これについてチャレンジしてみたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
エンジニアリングワークステーションや溶接機などの使用装置の状況および溶接実験ならびに応力計測実験にかかる費用の変更により,当初の予定よりも少ない予算執行となったが,今後の研究の推進方策に既述のように,高精度残留応力計測システムの開発・評価に関しては,更なる高精度化に向けて,次年度も継続・発展させる形で検討を進めて行きたいと考えている.そのため,次年度に使用する予定の研究費については,溶接用試験体の準備や計測に関わる消耗品の調達に係る費用を補填する形で使用し,高精度残留応力計測システムの開発・評価に関する取り組みをさらに強化するために使用する予定である.その他については,当初の計画から大きな変更は予定していない.
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