本研究は、液化ガスを加圧・減圧してキャビテーションを繰り返し発生させる装置を開発・使用し、タンク内圧の変化によって生じるキャビテーションによる繊維強化プラスチックの損傷機構解明を図ったものであり、得られた成果を要約すると以下の通りである。 実験は、ハイドロフルオロカーボンガスを圧縮・熱交換して圧力タンク内で液化し、圧力タンク内の試験片を浸漬し、弁開放による急減圧で液化ガスを沸騰させることで試験片にキャビテーション負荷を与えることで行った。実験に供したガラス繊維強化プラスチック試験片の表面をレーザ顕微鏡で観察し、初期表面き裂・空孔に注目して、キャビテーション負荷による深さ及び形状の変化を測定した。初期表面き裂・空孔の深さはキャビテーション負荷回数の増加に伴い、増大する場合とき裂・空孔周囲のキャビテーションにより深さが減少し、表面が平滑化される場合があることを明らかにした。 ガラス繊維強化プラスチックの力学特性に及ぼすキャビテーションの影響を評価するためJIS K 7057:2006に準拠したガラス繊維強化プラスチックの見掛けの層間せん断強さを評価した。見かけの層間せん断強さはキャビテーション負荷の影響を受けて変化した。キャビテーション負荷により表面のき裂・空孔深さは増大する傾向にあるが、表面損傷が大きくなることによる三点曲げにおける応力集中部の緩和により見かけの層間せん断強さは増大する傾向にあることを明らかにした。
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