研究課題/領域番号 |
23760111
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田中 隆太郎 金沢大学, 機械工学系, 講師 (60361979)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 旋削 / 機械構造用炭素鋼 / 工具摩耗 / セラミック工具 |
研究概要 |
本研究では,高速旋削時に優れた被削性を示すBN添加鋼への適用性を評価した.BN添加鋼は高速旋削時において工具に窒化物系の保護膜が形成され,最適な工具材種を選択すれば工具寿命が格段に延長できることが知られている.今回は工具の摩耗特性について調査を行った.2種類のセラミック工具の工具寿命は,VB=0.2mmとするとS45C切削時は10-20min程度であったが,BN添加鋼を切削すると純Al2O3セラミック工具が40min,TiC- Al2O3セラミック工具が300minと大幅に延長された.TiC- Al2O3セラミック工具による切削では摩耗の進行速度はほとんど変化せず,VBmax=0.3mmまで切削しても安定した切削が可能で600minの切削ができた.S45Cを切削したいずれのセラミック工具の摩耗面にも粒子の脱落によって形成されたと考えられる明確な溝状の擦過痕が見られる.一方BN添加鋼切削時において,いずれの工具摩耗面にも付着物が確認できる.純Al2O3セラミック工具の摩耗面は部分的に付着物に覆われている.また,TiC- Al2O3セラミック工具の摩耗面はほぼ全面にわたって付着物に覆われていた.触針式3次元粗さ計により測定したすくい面の詳細な幾何学形状から,純Al2O3セラミック工具,TiC- Al2O3セラミック工具ともにS45C切削時は摩耗が進行しているが,BN添加鋼切削時にはどちらの工具も摩耗はほとんど進行せず,表面に付着物が確認できた.また,TiC- Al2O3セラミック工具でBN添加鋼を切削したときの方がその堆積物の量が多いことがわかった.この付着物はAlNを含有する窒化物系保護膜であることが考えられ,工具と被削材間の反応を抑制する保護膜として働き,粒子の脱落などを抑えることで工具摩耗の進行が抑制されたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は,標準的な機械構造用炭素鋼とそれをベースとした快削鋼の切削試験において工具摩耗試験を行ない,連続切削である旋削加工における工具寿命の目標としていた600minを達成できる被削材とセラミック工具材種の組み合わせをを明らかにすることができ,機械構造用炭素鋼をセラミック工具で効率よく加工できる可能性を明らかにしたたため. また,工具摩耗面の観察から工具寿命が短時間となるときと長時間となるときの違いを明らかに出来たため.これらの理由から研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
24年度は,旋削加工における切削温度や切削抵抗の測定,仕上げ面品位の評価とともに断続切削である正面フライス切削における適応性を評価する予定としている. 断続切削では,漸進的よりチッピングなどの突発的な摩耗が工具寿命を作用することから,切れ刃長さに占める突発的な摩耗の割合を評価指標としてセラミック工具の機械構造用炭素鋼のフライス切削における適用性を評価することにしている. また,工具寿命の違いにより工具摩耗形態にどのような違いが見られるか観察を行うとともに,断続切削では加工雰囲気も工具摩耗に大きく影響するためこれらのことを考慮して工具摩耗の原因を推測し,工具寿命を延長させる手法を提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,国際会議や国内で開催される学術講演会でのこれまで得られた研究成果の発表や関連する研究者との情報交換のために必要な旅費や大会参加費,欧文誌投稿のための校閲費用およびさらに断続切削において切削試験を実施するために必要な消耗品や旋削加工におけるセラミック工具の摩耗をさらに詳細な観察を行うために必要なサンプルの準備に必要な消耗品の購入に充てる予定としている.
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