研究課題/領域番号 |
23760112
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
臼杵 深 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任助教 (60508191)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 三次元顕微計測 / インプロセス欠陥検査 / 超解像 / デジタルリフォーカス / サブピクセル / 三次元定在波照明 / 複数画像再構成 / アクティブ光制御 |
研究概要 |
高い空間分解能で3次元結像データを取得するための高解像度デジタルリフォーカス顕微鏡を研究・開発した.コンピュータグラフィックスの分野で利用されるデジタルリフォーカス技術を顕微鏡に適用し,被写界深度を拡大,焦点系列画像を取得した.さらに,マイクロレンズアレイを用いたデジタルリフォーカスにおける弱点である空間分解能の低下を補うために,前年度までに開発した結像光路シフトによるサブピクセル超解像を適用した.その結果,高解像度の全焦点画像および焦点系列画像を1ショット結像(1方向結像)により取得することが出来た.また,高解像度焦点系列画像に対して,ウェーブレット変換に基づいた合焦判定およびバイラテラルフィルタによる平滑化処理を適用し,顕微鏡テストターゲットの3次元点群データを抽出した.3次元変調照明により得られた顕微鏡画像に対して3次元的(面内方向および光軸方向)な空間分解能向上のための再構成処理手法を提案した.提案手法による3次元変調照明は4光束干渉に基づいているため,空間周波数領域における再構成処理のためには1点(ピクセル)につき13の未知数(空間周波数スペクトル)を求めることが必要となる.13種類の3次元画像を用いて,照明の高い空間周波数をデコンボリューションに反映させることにより,3次元的に超解像が実現することをシミュレーションによって確認した.顕微鏡動画像からスケールフリーかつマーカーフリーに広域合焦点画像を生成する手法を提案,研究・開発した.この手法により,視野が狭く被写界深度が浅いという顕微鏡の欠点を補うことが可能となる.具体的には,動画像からの特徴量抽出に基づいたモザイキング,局所分散値に基づいた合焦判定を行う.1フレーム毎に結果更新し広域合焦点画像を生成する.なお,以上の処理はGPUに実装されており,ナノ・マイクロ工業製品の高速外観検査への応用が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,アクティブな空間光制御による超解像計測特性とマイクロレンズアレイによる三次元光イメージングを高度に融合することによって,ミリメートルの空間領域(mm)3 においてサブマイクロメートル(sub-m)の三次元空間解像力が実現可能な全く新しい欠陥形状計測手法の確立を目的としている.本研究における提案手法は,遠隔伝搬光結像の一括取得,光学画像並列処理,光計測の本質である非破壊性,複数情報取得に基づいた外乱抑制,の観点から,次世代のナノ・マイクロデバイスの生産現場における高速計測手法として有効なアプリケーションとなることが期待できる.現在までの達成度としては,おおむね順調に進展していると思われる.本研究のキーポイントである三次元顕微計測に対して,デジタルリフォーカスというコンピュータグラフィックスで用いられる手法を適用したことが理由の一つとして挙げることができる.さらに,マイクロレンズアレイを用いたデジタルリフォーカスによって低下する空間分解能を,独自のサブピクセル超解像で補っており,オリジナリティー豊かな研究として発展させることが出来た.その他には,三次元方向とも同時に回折限界を超えた空間分解能を実現する四光束干渉に基づいた三次元定在波照明による超解像手法の研究もすすめることができており,達成度は高い.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案している四光束干渉に基づいた三次元定在波照明による超解像手法について実験的な有効性の検討を行う.特に実験装置および実験データ処理システムの確立を行う.実験装置の照明光学系は,四光束干渉光学系を独自に開発済であり,実験で得られたデータをもとに改良する.実験装置のイメージング光学系は,独自に開発したマイクロレンズアレイおよび結像光路制御によるサブピクセル超解像に基づいた高解像度デジタルリフォーカス顕微計測システムを導入予定である.実験で得られた複数画像の再構成処理アルゴリズムについては独自開発したシミュレーターに実装済みであり,得られた結果をもとに改良してゆく.
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次年度の研究費の使用計画 |
三次元定在波照明を生成・制御するための四光束干渉光学系に,導入している三種類のピエゾアクチュエータをデジタル同期制御するための,デジタルピエゾコントローラー3チャンネル(150万円程度)を購入する.次年度直接経費の合計に今年度の繰越額をあわせて購入する.これにより10万円程度の残額が生じるが,研究発表のための国内出張や研究協力者(大学院生)への謝金に使用する予定である.
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