加工方法に対する幾何学的な特徴領域(加工フィーチャ)を目標形状から認識して,NCプログラムを生成する複合加工機用工程設計支援システムを開発してきた.本研究では,これに工作機械の物理的特性を反映させるため,3次元CADソフトウェア上で工作機械の主要部品をモデリングし,物理モデル構築の基礎とした.また,モデリングした工作機械を用いて解析ツールにより工作機械の機構シミュレーションを実現し,動的干渉チェックを実現して加工時間を正確に予測できるようにした. さらに,一般的な鉄・アルミ系材料の溝やポケット加工などを対象に発生する切削力などによる工作機械・工具の変形の再現を試みた.切削力の算出には,切削断面積を基に計算する切削係数法を適用し,切削係数は基礎実験を行って実測した値を用いた.切削力や熱による工作機械構造の変形は,CADソフトウェアに付属する有限要素解析機能でも計算は可能であるが,計算時間は非常に長くなるため,別途開発している工作機械構造の静・動・熱剛性を高速に算出するシステムを利用した. 以上で得られた加工時間,加工精度,加工コストの指標を,開発してきた複合加工機用工程設計支援システムで発生する多くの判断時に活用する.工作機械の物理的特性も考慮することで,より総合的な指標に基づいた工程設計が可能となり,加工時間の短縮や加工精度の向上が期待できる. 他方では,超精密マイクロ切削加工を対象として,目標形状に含まれる高アスペクト比形状に適した工具経路を生成した後,加工で使用する制御軸を決定し,工具干渉を防ぎつつ形状精度を保つために必要なセッティングの精度を提示するCAMシステムを開発した.旋盤や3軸制御で加工困難な高アスペクト比ねじれ形状に対して同時5軸加工を試み,妥当な結果を得ることができた.
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