研究課題/領域番号 |
23760118
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
静 弘生 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (80552570)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ニオブ酸リチウム / 延性モード切削 / μ-TAS / LiNbO3 / ダイヤモン切削 |
研究概要 |
これまでの当研究グループによる先行研究では,旋削加工によるニオブ酸リチウムの加工実験を行い,切込みが数μmの条件では異方性の強い脆性材料であるニオブ酸リチウムでも延性モード切削が可能であることがわかっている. しかしながら,切削によるμ-TASなどのデバイスを作成するためには旋削加工では不可能であり加工形状の自由度が高いエンドミル加工が必要となる.しかし,エンドミル加工は旋削加工と加工現象が異なることからニオブ酸リチウムのエンドミル加工における切削現象を明らかにする必要がある.このことから,平成23年度は上記の結果を踏まえてニオブ酸リチウムのエンドミル加工を行った.実験では超硬エンドミルとcBNエンドミルを用いて様々な切削条件でニオブ酸リチウムの微細溝加工を行い,加工溝の欠けやクラックの発生,溝底面の加工性状について調査を行った. マイクロエンドミルを用いた加工実験では旋削加工ほど異方性の影響が見られず,切削方向の差異による加工溝の欠けに大きな違いが見られなかった.しかしながら,溝底面の仕上げ面粗さに関しては切削方向が仕上げ面粗さに影響を及ぼしており,約10倍粗さ値に違いが見られた.また,本実験では送りや切込み条件を変化させて溝加工実験を行い,除去量を小さくすることにより欠けやクラックを低減できることを明らかにした.更に実験では切削条件と工具摩耗の関係についても調査を行った. また,マイクロエンドミル加工では工具の振れが加工溝性状に大きく影響を及ぼすことが考えられるが,本実験で用いた工作機械の主軸の測定を行ったところ軸振れ量は非常に小さく,溝性状にあまり影響を及ぼさないことがわかった. 更に,加工溝エッジ部の欠けを防ぐためにニオブ酸リチウムの表面に予めレジストによる表面保護層を作成して加工を行ったが,加工溝の欠け低減効果はあまり見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,基板上に弾性表面波デバイスを作成し連続流体の駆動が可能なマイクロポンプ,マイクロ流路の開発である.本研究の着想はフォトレジストで流路を形成するのではなく,ニオブ酸リチウムを直接切削することにより流路を作れば,機能・性能の向上が期待できるのではないかと考えられるためである. この目標に対し,平成23年度終了時点ではマイクロエンドミル加工によるニオブ酸リチウムの切削特性について調査を行い,最終的にマイクロ流路の作成を行った.このことから,最低限の目標は達成できていると考えられる.しかしながら,作成した微細溝は加工溝に欠けなど多くの欠陥が見られることからμ-TASとして用いるには多くの問題を抱えているため,より良好な溝性状を得る加工法の確立が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の実験によりエンドミル加工による微細溝形状の加工ができた.しかしながら製作した加工溝は溝エッジに多くの欠けが発生しており,μ-TASとして用いるためにはこの問題を改善する必要がある.溝に欠けが生じた理由としては使用工具が超硬合金やcBNであったことから工具刃先の丸みが大きいためであると考えられる.従って,より刃先エッジが鋭利であるダイヤモンド工具の使用が効果的であると考えられる.このことから,平成24年度は単結晶ダイヤモンドエンドミルや焼結ダイヤモンドエンドミルを用いて用いて微細溝加工実験を行い欠けや欠陥のない良好な溝加工を目指す.また,エンドミル加工では旋削加工と比べて加工現象が複雑であることから脆性材料を切削した際には欠けの発生などが生じやすい.このことから,シェーパ加工のように工具を回転させず加工する方法が有効的であると考えられる.従って,平成24年度は新たに単結晶ダイヤモンドバイトを用いたシェーパ加工についての実験を追加する. 本研究課題申請時には購入備品として,微細工具測定器と3分力動力計を計上していたが,実験に使用する工作機械の振れ精度が非常に高精度であり振れが加工性状にほとんど影響を及ぼさないことが判明したことや,加工溝の欠陥を抑制するためには切削力の制御よりも使用工具材種の変更がより有力視されることから,これらの備品購入費を平成24年度に繰り越しダイヤモンド工具の購入費とする. 以上の事項を踏まえて,平成24年度は上記のダイヤモンドエンドミル加工とダイヤモンド工具によるマイクロシェーパ加工の2点について研究を行う. また,実験により得られた微細溝を用いてμ-TASを製作し流体や粉体の移送実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
既述のように次年度は本課題申請時に計画していたダイヤモンドエンドミルを用いた実験に加え,新たにダイヤモンドバイトによる実験を新たに行う.このことから,本研究課題の申請時は平成24年度の工具購入費は\220000であったが,ダイヤモンド工具を用いて切削実験を行うためには工具購入が不足し,系統立てた実験を行うことは困難である.このため,平成24年度は「今後の研究の推進方策」で述べたように前年度の繰越金額\1340028をダイヤモンド工具購入費にあて研究を行う. これにより,平成24年度の研究費の使用計画は工具購入費\220000(当初計画)+\1340028(繰越し)=\1560028.切削試験用資料購入費\100000の計画で研究を行う.
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