研究課題/領域番号 |
23760120
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
瀬戸 雅宏 金沢工業大学, ものづくり研究所, 講師 (90367459)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 射出成形 / 配向制御 / 機能発現 / 導電性樹脂 / メッキ繊維 / 体積抵抗 |
研究概要 |
銅メッキ繊維を含有した導電性射出成形品は,樹脂流動の影響により体積抵抗率に強い異方性が生じ,特に成形品板厚方向の体積抵抗率は面内に比べて非常に高く,板厚方向の体積抵抗率低減が課題となっている.これまでの研究により,体積抵抗率の面内異方性は,成形中の樹脂流動によるメッキ繊維の配向に起因することを明らかにしてきた.この結果から本研究では,板厚方向にメッキ繊維を配向させることにより,板厚方向の体積抵抗率低減が期待できると考え,メッキ繊維の板厚方向への配向制御方法を検討した.メッキ繊維の板厚方向への配向制御手法としては,化学発泡材を使用した射出発泡成形を応用した. ポリプロピレンにメッキ繊維を12%含有させた材料をで平板を射出成形し,流動方向(MD),流動直角方向(TD),板厚方向(ND)の体積抵抗率を抵抗計で測定した.その結果,未発泡品では,MD:22.7Ωcm,TD:60.5Ωcm,ND:6802Ωcmであったのに対し,発泡材(EE65C)を混ぜて発泡成形した試験片では, MD:43.6Ωcm,TD:71.6Ωcm,ND:3139Ωcmとなり,発泡成形によってNDの体積抵抗率が低減することが確認された.さらに,発泡力の低い発泡材(EE25C)に変更して体積抵抗率を測定した結果,NDの体積抵抗率が67.2Ωcmになった.この結果を考察するため,メッキ繊維の配向状態を観察した結果,未発泡品ではNDに配向したメッキ繊維はほとんど見られなかったが,EE65Cを用いた発泡成形品では,内部に気泡が存在しており,気泡の成長によってメッキ繊維がNDに配向していることが確認された.さらに,EE25Cを用いた成形品では,内部の小さな気泡が多く存在し,メッキ繊維もNDに多く配向していることが確認された.この結果から,NDの体積抵抗率低減には,微細発泡が有効であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
射出発泡成形によりメッキ繊維を板厚方向(ND)に配向させ,NDの体積抵抗率低減効果を検討した.PPをマトリックス材として使用した場合,良好な発泡状態が得られ,発泡状態の制御因子を明らかにすることができた.また,発泡材について検討した結果,発泡力の弱い発泡材を用いることで微細な発泡状態が得られるとともに,メッキ繊維がNDに配向していることが確認され,最適な樹脂および発泡材の選定,成形条件の確立に成功した. メッキ繊維のNDへの配向メカニズムを検討するため,PSにメッキ繊維を含有させ,可視化金型による成形中のメッキ繊維配向挙動の観察を試みた.その結果,樹脂流動中はせん断流動によりメッキ繊維が流動方向に配向する様子が観察されたが,発泡によるNDへの配向挙動観察は,発泡に伴って樹脂が白濁したため詳細に観察できなかった.しかし,成形品断面を顕微鏡で詳細に観察すると,気泡間の樹脂部にメッキ繊維が集中し,NDに配向していることが確認され,発泡・気泡成長によってNDに配向することが示された.物理発泡成形におけるメッキ繊維の配向制御に関しては,安定した発泡,制御条件が確立できず,次年度において継続検討する. 以上の内容は,23年度研究計画と比較して,一部検討が不十分な項目もあるがおおむね計画通りに遂行できている.
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今後の研究の推進方策 |
23年度はおおむね計画通りに研究が推進できているが,物理発泡成形によるメッキ繊維の板厚方向(ND)への配向制御に関して,安定した発泡状態が得られなかったため十分な検討が行えなかった.そのため,24年度も引き続き物理発泡成形によるメッキ繊維のND配向制御について検討を行う. また,高熱伝導樹脂射出成形品に関してもNDの熱伝導率向上を目的に,高熱伝導フィラーをNDに配向制御する方法を検討するとともに,NDの熱伝導率に与える発泡状態の影響を明らかにする.さらに成形品の熱伝導率を評価するための熱伝導率測定装置の開発に取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は,高熱伝導樹脂射出成形品における高熱伝導フィラーのND配向制御技術の開発について重点的に研究費を使用する計画である.熱伝導率の測定には,周囲への熱拡散を抑制する必要がある.そのため,熱伝導測定装置に必要な部品,センサー等の他に,真空装置の購入も計画する.そのほか,高熱伝導樹脂や化学発泡材,物理発泡成形に使用する二酸化炭素ガスボンベ等の材料購入,研究推進に必要な消耗品等を精査しながら購入する計画である.また,研究成果発表のための学会出張費,論文投稿費用にも研究費を使用する.
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