研究課題/領域番号 |
23760122
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
加藤 友規 福岡工業大学, 工学部, 助教 (20390429)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生産加工・加工学 / 超精密切削加工 / エアタービン / 静圧空気軸受 / 圧力制御 / 回転数制御 |
研究概要 |
超精密非球面加工機などの超精密加工機械において,高精度・高速対応・低摩擦・低振動などの優れた特性を有する,静圧空気軸受が広く使用されている.特に,高速回転が求められる軽負荷の小径工具用や回転噴霧式塗装用の主軸の駆動には,静圧空気軸受を用いたエアタービンスピンドルが用いられている.加工負荷による回転数低下を抑制するためにエアタービンでは一般的に,供給空気圧を高くして所定の回転数を維持する方法が採られている.しかし空気圧供給ラインの上流で外乱が発生した場合に圧力変動が抑制できない問題が発生する.これまでに供給空気圧・流量・回転数・出力トルクの関係に関して研究は行われていたが,供給圧と流量を高速かつ精密に制御する技術が確立されておらず,エアタービンにおいて出力・回転数の高速かつ安定な制御は困難であった.そこで本研究では,静圧空気軸受を用いたエアタービンスピンドルの主軸回転数の安定化と高速制御を実現することを目的とした.外乱が発生した際の回転数の変動を抑制させる為に,タービン駆動側供給圧を,これまで開発を進めてきた気体用超精密高速応答圧力レギュレータに回転数フィードバック制御と外乱オブザーバを取り入れて制御した.具体的には,回転数の制御系を回転数フィードバック制御で構成し,その制御系内に外乱オブザーバを設定した.この外乱オブザーバによって,発生した加工外乱を推定しフィードバック制御することで,加工負荷の変動で発生する回転数の変動を補償する制御システムを構成した.この提案する回転数制御システムと従来の方法で外乱を与える実験を行い,従来の方法と比較して提案する回転数制御システムでは回転数を高速かつ安定に制御することができた.さらに,簡易な切削加工実験を行い,段差面等の外乱により発生する加工力の変化による回転数の変動を,提案方法では従来の10分の1以下に低減することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究費申請時の研究計画調書に記載した,研究計画・概要のうち,平成23年度までの計画を概ね満足し,部分的には計画以上に進んでいる部分もある.以下,研究計画・概要で掲げた項目毎に平成23年度末までの進捗状況を振り返る.1.静圧空気軸受式エアスピンドルタービンを制御するためのHPQR の開発…目標とする仕様を全て満たしたHPQRを製作し,性能を特性試験実験により確認した.2.静圧空気軸受エアタービンスピンドルの製作と性能の評価装置の製作と評価実験…自成絞りを用いた制圧空気軸受エアタービ分スピンドルを製作し,計画通りの各種特性実験を行う設備を整え,特性実験を行なった.3.エアタービンスピンドルの回転速度・軸出力制御と発熱計測実験…この項目についても,ほぼ計画通り行なうことができた.ただし,供給圧力・剛性・軸受隙間と発熱の関係の評価については,実験結果の解析・評価が完了しておらず,現時点ではまだ一部課題を積み残しているといえる.平成24年度の計画である提案した回線速度・軸出力制御を用いた超精密切削加工実験にも平成23年度中に取り掛かることができ,段差面等の外乱により発生する加工力の変化による回転数の変動を,提案方法により大幅に低減できることを確認した.以上より,本研究はここまでのところ,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究では,「提案方法により制御された静圧空気軸受エアタービンスピンドルを用いた超精密切削加工実験と加工表面の評価」を目的とし,以下を計画している.まず,平成23年度までに開発したスピンドルユニットを実際の加工において使用するために改良を実施する.具体的には,回転数計測部を本体に組み込んだスピンドルユニットを製作する.その後,上記のスピンドルユニットを用いて,軟質金属やガラス材の超精密ダイヤモンド切削実験を行ない,加工実験後,加工表面の評価(表面粗さ・形状転写精度)を行うことにより,提案方法の有効性を検証する.加工面の評価には,福岡工業大学の現有設備である表面粗さ計,SEM,金属顕微鏡等を使用することとする. また,非球面加工機用の電空バイブリッドの超精密空圧駆動粗微動サーボステージ実験装置を製作し,鉛直バランスエアシリンダの内圧を高速・精密に制御することで位置決め制御性能・加工精度にどのような効果があるかを評価することとする. なお,研究成果の発表として,日本フルードパワーシステム学会,精密工学会,アメリカ精密工学会(ASPE)等の学術講演会での発表および学会論文集への投稿を予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の未使用額については、当初計画していた使用研究費と実際の使用研究費に若干の差が生じたため発生したものである。未使用額も含め、平成24年度は下記の研究費の使用を計画している.・回転数計測部を本体に組み込んだエアタービンスピンドルユニットの製作スピンドル本体…500千円,回転数計測部…200千円 その他,以下の項目について研究費の使用を計画している.配管配線用消耗品…120千円,加工実験用消耗品…100千円,研究連絡・打合せ旅費…100千円,学会発表旅費…100千円,その他(学会参加登録費・送料等)…10千円
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