研究課題/領域番号 |
23760124
|
研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
玉木 隆幸 奈良工業高等専門学校, 電子制御工学科, 講師 (80455154)
|
キーワード | オートフォーカス / 超短光パルス / マイクロ接合 / FPGA / 階調値差 / コントラスト法 / 微細加工 |
研究概要 |
本研究では、超短光パルスマイクロ接合法にオートフォーカス機構を組み込み、被接合材料の境界面高さに応じて集光点位置をリアルタイムに自動調整可能な接合システムを開発する。本システムを用いれば、確実に境界面のみを溶融させることができ、安定性、信頼性、品質性の観点から高度化した接合技術を確立できる。さらに、構築されるオートフォーカス機構は生産加工分野における要素技術となるため、穴加工、溝加工をはじめとする多くの微細加工分野への展開が可能であり、三次元微細構造の形成技術に応用することもできる。 平成24年度の研究成果としては、平成23年度に開発したオートフォーカス機構を構成するFPGAに、シリアル通信プログラムを組み込むことにより、電子計算機とFPGAを接続し、オートフォーカス機構を組み込んだ超短光パルスマイクロ接合システムを開発した。さらに、焦点検索動作時の精度向上を目的として、3つの検索動作を考案し、焦点検索が実現するまでの時間を評価した。検索動作としては、(1)500 μmずつ20回自動ステージを移動し、最大階調値の地点(焦点位置)を求める。さらに、この地点において、50 μmずつ20回検索し、最後に5 μmずつ20回検索し、焦点位置を求める方法、(2)1000 μmずつ自動ステージを5回検索し、最大階調値の地点において、100 μmずつ20回検索し、2.5 μmずつ40回検索する方法、(3)(2)の方法において、階調値の下がり始めを検知すれば,検索動作を終了し、次の検索を始める方法である。3つの検索方法において検索終了までの時間は、(1)の場合78.6秒、(2)の場合87秒、(3)の場合51.6秒であった。 さらに、探索動作(3)により試料表面を求め、本接合システムによりガラス間の超短光パルスマイクロ接合を10回行った。この結果、成功率80%にて接合することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における平成24年度までの研究計画としては、平成23年度に実現したオートフォーカス機能を組み込んだFPGAを電子計算機と接続し、CCD(Charge coupled device)カメラにより撮影した焦点位置が異なる被接合試料の画像から、画像全体の階調値が最大となる地点を探索可能なオートフォーカス機構を組み込んだ超短光パルスマイクロ接合システムを開発することである。この計画に関しては、シリアル通信プログラムをFPGAに組み込むことにより、FPGAと電子計算機間の接続ができ、オートフォーカス機能を超短光パルスマイクロ接合システムに組み込むことが可能となった。さらに、焦点検索動作時の精度向上を目的として、3つの検索動作を考案し、焦点検索が実現するまでの時間を評価した。この結果、51.6秒にて焦点位置を検索することが可能となった。さらに、この検索動作を用いたガラス間の超短光パルスマイクロ接合を10回実施した。この結果、成功率80%にて接合することが可能となった。 また、被接合材料の種類、形状、光パルスのエネルギーなどの接合条件を変化させた場合、本接合システムの安定性、信頼性に与える影響に関する知見を集積した。 つまり、当初予定していた研究計画どおりに研究が進捗していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
オートフォーカス機構を組み込んだ超短光パルスマイクロ接合システムにより推定される被接合材料境界面における試料間隙を考慮し、接合に最適な三次元溶融部の形状を探索する。例えば、試料間隙が中心から徐々に広くなっていくような場合、入射光強度を中心から徐々に大きくしていくことにより、非線形吸収現象により周辺部の溶融部は光軸方向に長くなり、試料間隙が大きい周辺部においても接合を実現することができる。当然、被接合材料の境界面高さに応じて集光点位置を変化させることによっても接合を実現することができる。このように、入射光強度と集光点位置の最大2つのパラメータを調整することにより、同心円、正方形、螺旋などの溶融部を形成する。さらに、集光点を試料内側から外側へ,または,試料外側から内側へ走査することにより、これらの溶融部を形成する。そして、溶融部形状、および、溶融部の形成方法が接合結果、接合強度に与える影響についての知見を集積する。 また、本研究課題に対しては最終年度となるため、安定性、信頼性、品質性に富む、境界面高さに応じて集光点位置をリアルタイムに自動調整可能なオートフォーカス機構を組み込んだ超短光パルスマイクロ接合法システムを実現する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、オートフォーカス機構を組み込んだ超短光パルスマイクロ接合システムにより推定される被接合材料境界面における試料間隙に応じて、接合に最適な三次元溶融部を形成させるために、回転ステージ、ステージ制御用機器、光学部品などを購入する予定である。さらに、国内学会、国際学会、学術論文誌への成果発表を行うための費用としても使用する計画である。
|