研究課題/領域番号 |
23760130
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青木 才子 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30463053)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 吸着膜 / 高分子化合物 / 多点吸着 / 摩擦低減効果 / 官能基 / 境界潤滑 / 誘電緩和 |
研究概要 |
有機分子吸着膜による低摩擦機構への転換が求められている背景から,低速度・高荷重などの厳しいしゅう動条件において吸着膜の脱離・配向性の消失を防止し摩擦低減効果を維持することが要求されている.本研究では,多官能性高分子化合物の分子設計および表面粗さ付与によるマイクロ流体効果の発生とのマッチングにより,高分子の吸着挙動を制御し,高分子吸着膜による低摩擦メカニズムの構築を最終目標とする. 平成23年度では,高分子の多点吸着性の向上と高分子吸着膜における高分子鎖構造の評価を目的として,官能基化されたポリメタクリレート(PMA, Polymethacrylate)を用いて,極低速を含む広い速度範囲における速度変化および昇温試験など厳しいしゅう動条件における摩擦試験を実施した.官能基化されたPMAでは,官能基濃度(PMA中の官能基数)が増大するにつれて,極低速域や高温度など厳しい条件にもかかわらず,低い摩擦係数を示すことが明らかになった.この結果より,多官能性高分子化合物では,多数の官能基が吸着点を担う多点吸着により吸着膜が形成されるため,分子が容易に脱離せずに摩擦面に維持され,低速域や高温度条件においても吸着膜を維持し摩擦を低減することが示唆された. さらに,極性が異なる数種類の潤滑油基油に添加したPMAに着目し,極性基油におけるPMAの増粘効果,誘電緩和現象,摩擦挙動を測定し相互の関連性を明らかにした結果,膨潤状態や糸鞠状など高分子鎖構造の変化に伴い,摩擦低減効果が異なることが示された.また,高分子の電気的性質として誘電緩和現象を応用することにより,多官能性高分子化合物の多点吸着挙動を評価することが可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,多官能性高分子化合物の多点吸着性の向上と吸着膜における高分子鎖の構造の評価を実施した.さらに,多点吸着性の向上をもたらす官能基の割合など分子設計に関する基礎的知見が得られ,高分子鎖の構造と摩擦低減効果の関連性も明らかになっており,本研究はおおむね予定どおり進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,多官能性高分子化合物から形成された多点吸着膜の摩擦低減効果を明らかにするために,マクロスケールで形成された多点吸着膜から潤滑油分を除去し,軽荷重・無潤滑下でマクロスケールの摩擦試験を実施して,吸着膜自身の真の摩擦特性を評価する.また,ポリマーブラシ膜など種々の高分子膜におけるマイクロ摩擦特性の比較評価を実施して,優れた摩擦低減効果を発揮する最適は高分子鎖構造のモデルを検討する. 同時に,本研究の最終目標である多点吸着膜と表面粗さとのマッチング効果を達成するため,表面粗さやテクスチャを導入し,多官能性高分子化合物の多点吸着挙動や摩擦低減効果に及ぼす表面テクスチャの影響を明らかにする.得られた結果より,表面粗さと多点吸着膜の相乗的摩擦低減メカニズムを提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は,当初予定していた学会発表などの出張がなくなったため,旅費や謝金などから未使用見込額が生じた.平成24年度は,この未使用見込額を物品費として計上する. 平成24年度において,物品費は,摩擦試験関連や分析機器関連の消耗品として使用する.予定である.また,旅費では,1~2回の国内発表による出張費として使用する.謝金・その他として,学内で相互利用が可能である高度な分析器類(課金制)の使用料として用いる予定である.
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