研究課題/領域番号 |
23760134
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北山 哲士 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (90339698)
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キーワード | 最適化 / 機械学習 / 逐次近似最適化 / 多目的最適化 / 塑性加工 / スプリングバック |
研究概要 |
塑性加工の分野では,材料を加工する前の様々な条件を決定するための検討手段の一つとして,コンピュータシミュレーション(CAE)技術が活用されている.塑性加工では,ブランクホルダー力(Blank Holder Force:BHF)を適切に調整して材料を金型間に流し込むが,BHFが大きすぎると材料に割れが生じ, BHFが小さすぎるとしわが発生する.また加工終了後,材料中の残留応力によってスプリングバックが起こる.さらに成形加工品には常に板厚の不均一が残るものの,板厚分布は均一であることが望ましい.そのため,板厚変動・しわ・割れ・スプリングバックを軽減するようなBHFを設定することが重要である.また,しわ・割れ・スプリングバックの間に はトレードオフの関係があるが,これらの間の関係を定量的に把握して成形を行うことは学術上,有用な知見をもたらすと考えている.先進的な加工法として,成形加工中における材料を抑えるブランクホルダー力を適切に調整する可変ブランクホルダー力による加工法がある.この加工法で最も重要なことは,加工過程で材料に発生するしわ・割れを抑制し,さらにスプリングバックを軽減する可変ブランクホルダー力の最適軌道を求めることである.本研究では,RBFネットワークを利用した多目的逐次近似最適化システムを開発し,深絞り加工を対象とした塑性加工シミュレーションを行い,しわ・割れ・スプリングバックを抑制するような可変ブランクホルダー力の最適軌道を求め,その有効性を検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度作成したU字ハット曲げ有限要素解析モデルを用いて,加工直後における残留曲げモーメントを目的関数とし,成形限界線図を利用して割れを定量的に評価することで制約条件の定量的算出方法を提案した.可変ブランクホルダー力の軌道を表現するために,加工ストロークを分割して各ストロークのブランクホルダー力を設計変数とした単一目的の最適設計問題を構築した.この最適設計問題を解くために,Radial Basis Functionネットワークを利用した逐次近似最適化システムを用いて可変ブランクホルダー力の最適軌道を求めた.得られた最適軌道は工学的に妥当な結果を示しており,また理論的検討からその妥当性を裏付けることができた.またいくつかの可変ブランクホルダー力の軌道を設定し,本研究で得られた最適軌道によるスプリングバック抑制の効果を検討した結果,本研究で得られた可変プランクホルダー力の最適軌道が最もスプリングバック抑制に効果的であることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きRadial Basis Functionネットワークを多目的近似最適化アルゴリズムに焦点をあて研究を行う.またエクセルベースの多目的逐次近似最適化システムを構築する.さらに最適化に関する研究の拡張として,ロバスト最適設計に関する基礎研究を行いつつ,ロバスト逐次近似最適化に関する研究を行う.また,スプリングバック・板厚変動・割れを同時に最小化するような可変ブランクホルダー力の最適軌道をシミュレーションを通じて求め,理論的側面からその妥当性を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議および国内の学会・講演会に参加し,本研究の成果を積極的に公表するとともに学術論文を執筆し,国内外に競争力のある研究であることを示す予定である.特に多目的逐次近似最適化は国際的にも工学設計の分野では研究の対象であるため,多目的逐次近似最適化の理論研究とその応用事例をまとめ,ジャーナルに投稿する予定である.
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