研究課題/領域番号 |
23760139
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
中村 太郎 中央大学, 理工学部, 准教授 (50315644)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 可変粘弾性 |
研究概要 |
現在、医療・リハビリテーション分野をはじめとして、人間との協調活動が必要とされるロボットシステムの構築が求められている。これらのロボットは,人間と同じフィールドに存在するため,人間の腕のように、柔軟でありながら振動の少ない関節をもったマニピュレータを持つことがふさわしい。しかしながら,現在ロボットに用いられているモータの多くは,減速比の高い機構を有しており,人間との接触や衝突に対して十分な安全性が確保されていない。またトルクの負荷等を考慮した応答の遅れを鑑みた場合、ソフトウェアコンプライアンス等による制御系の適用にも限界が生じる。そこで,応募者らはアクチュエータとして空気圧ゴム人工筋肉(以下:ゴム人工筋)に着目した.ゴム人工筋は機構的な柔軟性を有し,軽量であるため、人間等への接触や瞬間的な衝突に対して有効であると考える。しかしながら,ゴム人工筋は低剛性であり、空気圧によって動作するため応答が遅い。したがって,物体保持や持上動作において,制御不能な振動を生じ,アームが安定化しにくいという問題点があった. そこで本研究では、ゴム人工筋マニピュレータに磁気粘性流体( 以下:MR流体)を適用することを提案する.MR流体は磁場を与えることにより,高い応答速度(ミリ秒単位)で見かけの粘性が可逆的に変化する流体である.この流体をゴム人工筋マニピュレータの関節部に適用することで,柔軟でありながら、大きな振動を引き起こすことのないマニピュレータが構成できると考えている。さらに、ゴム人工筋による関節剛性とMR流体による粘性を独立に制御することで、ゴム人工筋の弾性エネルギを利用した、瞬発力をともなう挙動も実現できる。この挙動は、パワーアシスト機器への応用を考えた上でも、省エネルギーで大きな出力を得られるような装置を開発できる可能性があり、可変粘弾性関節の特長を生かした興味深い特性である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 小型MRブレーキの設計・試作と動特性モデルの導出●小型MRブレーキの設計:多自由度マニピュレータに搭載できるような小型のMRブレーキの設計・試作を行った。具体的には、ディスク盤を多層にして、接触面積を大きくするとともに、ディスク間距離を小さくし、磁界を大きくすることで出力密度を上げ、小型化が実現できた。●MRの動特性モデルの導出:MRの動特性モデルについては、応募者らが過去の研究で行った電気粘性流体(ER流体)の動特性モデル(中村ら[2004]) を参考に構築した。これらは、磁気と電気の違いによる動特性の違いを考慮すれば、その粘性発現メカニズムは同様であることがら、マクロ的な動特性の把握は可能である。(2) 開発されたマニピュレータの非線形性動特性モデルを導出MRブレーキの製作は2~3ヶ月かかるとされるので、その期間に、マニピュレータの非線形動特性モデルを導出した。現在まで、応募者によって開発された軸方向繊維強化型ゴム人工筋肉の力学的平衡モデルの導出によるフィードフォワード線形化、またそのゴム人工筋を拮抗させたマニピュレータの位置・トルク・剛性制御を実現している。sらに本研究では、この動特性で得られた小型MRブレーキの動特性を追加することで、MRブレーキをを関節に用いたゴム人工筋マニピュレータの動特性を構成できた。
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今後の研究の推進方策 |
"マニピュレータに負荷を印加し目標角度まで持ち上げたとき"、および"任意の角度で突然負荷を印加したとき"に生じる振動を低下させる手法について検討する。具体的には研究を円滑に進められるように以下のようないくつかの制御手法を提案し、マニピュレータに適用する。まず、目標角度近辺に達したら、MRブレーキの摩擦係数を上げて、ブレーキをかけ振動抑制する。次に、得られた動特性に基づくノミナルモデルに追従するようにブレーキを制御する。さらにMRブレーキの粘性係数をマニピュレータの角度に応じて変化させることで振動制御する。最後に可変弾性制御による瞬発的な動作の実現と瞬発的な動作の制御は基本的に、ゴム人工筋の構造的な弾性特性を最大限に生かすことで実現する。具体的には以下の手順で制御する。手順1 MRブレーキの摩擦係数を上げた状態で、人工筋に圧力を印加する。手順2 その後MRブレーキの摩擦係数を一気に低下させる。手順3 ゴム人工筋肉のバネ特性により、本来の圧力の応答よりもはるかにすばやく応答する。手順4 本挙動をMRブレーキによる上記の制御手法を用いて制御していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な使用用途の計画・ゴム人工筋作成代:100千円・・・研究室で毎年作成されるゴム人工筋の作成代について調査したところ、おおよそ10万円程度であった。本ゴムは特殊なラテックスゴムとマイクロカーボン繊維を用いている。・3Dプリンタカセットアカデミックパッケージ代:910千円・・・8 ページの設備において記述した3Dプリンタの材料代である。本パッケージで本研究の3年程度の材料費を確保できると考えている。なお本代金は2010年度の見積価格である。・国内外の旅費について例年、ゴム人工筋関連の国内発表は5~9件程度、国際会議発表は1~3件程度となっている。本旅費はこれらの旅程のいくつかを本研究費に当てる予定で試算されている。
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