研究課題/領域番号 |
23760144
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大石 正道 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (70396901)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マイクロ流 / マイクロ光造形 / 共焦点スキャナ |
研究概要 |
初年度は露光システムの構築と硬化条件の調査に充てた。 まず、狙っていた共焦点効果によるマイクロチャネル空間内への露光エネルギー集中と硬化物生成については十分に効果が確認され、流路の奥深くに硬化物を生成することができた。また、数種の対物レンズを用いて、倍率やNAが硬化物のサイズに与える影響のデータを集めることができた。 光源は主に高出力の白色光源と波長幅の狭いレーザを数種類テストした。調査の結果、白色光源は十分な出力を備えていたが、要求されるレベルにまで共焦点深度を絞ることができないことが判明した。レーザを用いると共焦点深度をより浅く絞ることが可能となったが、硬化樹脂の感光特性との組み合わせによっては、全く硬化しない場合や硬化に時間がかかりすぎる場合があった。これについてはいくつかの波長と樹脂をテストし、最適な組み合わせと短時間硬化に必要な出力を見出すことができた。これらコンポーネントのテストに当たっては、多くのレーザメーカ、樹脂メーカの協力を得られている。 照射面内での均一な硬化については、ガウス分布などの光強度プロファイルを持つレーザをそのまま共焦点スキャナに挿入すると、照射面内で均一な強度分布にならず一様な厚みの硬化物が得られなかった。そこで、反ガウス分布の減衰率を持つアポダイジングフィルタを光路に挿入することにより、強度分布の均一化を達成した。ただし、この手法では全体的な照射強度が低く抑えられてしまうため、より出力の高いレーザもしくは回折素子の導入を検討している。 パターン露光に用いるデジタルミラーデバイスはその挿入位置の検討をまず行い、共焦点スキャナ内の反射ミラーと置き換える形で挿入し、光学的に像が歪まないことも確認した。いくつかの候補位置のうち、角度調整や外部との配線を行いやすい位置に設置することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的とした、1)共焦点3次元光造形システムの開発、2)血球モデル混相流の流動計測、3)3次元光造形システムの応用先の提案に対し、1)に関してほぼ予定通りに研究が進んでいる。具体的には、初年度計画の露光システムの構築および硬化条件の調査に関して、要求された仕様に対して必要な検討を行い、定量的なデータを得ることができている。光源の購入が遅れてはいるが、選定済みであり、納品に時間がかかっているのみである。 また光源納品までの期間を用いて次年度予定のシステム同期を一部前倒しで進めており、制御ソフトウェア「LabVIEW」を用いた制御プログラムの開発を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、デジタルミラーデバイスとシステム同期を進めている。硬化ビーズの連続生成と回収に関しては、他の研究で開発した圧力制御システムがほぼ完成しており、これを本装置に組み込む予定である。 様々な3次元形状の作成が成功した後に、マイクロPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)システムを用いて血流を模した混相流動の可視化計測を行い、その挙動について定量的な知見を得る。マイクロPIVに関しては十分な設備とノウハウを有しており、円滑に計測を進められると考えている。 将来的なアプリケーションへの応用検討としては、ドラッグデリバリーシステムに用いることができるような生体適合性樹脂を使用したビーズ生成や、ビーズに限らず流路内に様々な3次元構造物を作り込むことで、より高機能のマイクロ流体デバイス開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度納品の間に合わなかった光源を次年度初頭に予定している。また、デジタルミラーデバイスに関しても、使用波長での反射率を改善したものを購入予定である。 消耗品としては、レーザの光強度プロファイル均一化のために回折格子の購入を検討する。他にマイクロPIV計測用蛍光粒子、マイクロチップ材料となるシリコーン樹脂およびスライドガラス、マイクロビーズの材料となるモノマーや高分子試薬が必要である。 その他、成果の発表については計画通り2件ほどを予定している。
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