研究課題/領域番号 |
23760144
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大石 正道 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (70396901)
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キーワード | マイクロ光造形 / 共焦点スキャナ / デジタルミラーデバイス / マイクロ混相流 |
研究概要 |
今年度は装置の各コンポーネントの購入と、より高精度な形状の造形の実現を目指して改良を行った。 初年度に検討を行った光源について、最も本手法に適したレーザを選定し、購入した。波長は共焦点スキャナ内部を通すことのできる最短波長の375nmとし、パワーは必要十分なMAX70mWとした。特に熟慮を要した部分は、レーザのプロファイル(強度分布)であり、できるだけきれいな同心円状ガウシアン分布を持つ機種を選定した。これは、最終的にビームシェイパーを用いて均一でフラットなプロファイルに成形するためである。さらに、光路にピンホールを挿入することでより理想的なプロファイルに成形し、フラットにしたときの強度のばらつきを10%程度にまで改善した。 次に、光造形において硬化面を精密に位置制御するための対物レンズピエゾポジショナを選定・導入した。スペックとしては従来型の100μmに対して250μmのストロークとし、より深い流路に対応した。 システムの核となるDMD(デジタルミラーデバイス)は動作確認を終了したもののUV対応品の製作にメーカ側で時間がかかっており、年度内の納入に間に合わなかった。よって、現在は単純なパターンをミラーに貼って代用している。 DMD納入までに計画のStageIIにあるDMDとピエゾ、共焦点スキャナの同期、ビーズ連続生成と回収、およびマイクロ混相流の計測を先行して行った。システムの同期にはLabViewを用いて同期プログラムを構築し、露光とz位置制御のタイミングを制御可能とした。現在はビーズ連続生成システムも組み込んだより高度な制御を構築中である。混相流の計測へ向けては、硬化させたビーズの挙動計測のため、内部により小さな蛍光トレーサ粒子を混入させて硬化する手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば本年度までの2年間での研究終了を予定していたが、DMD(デジタルミラーデバイス)導入に関する一連の遅れにより、1年間の延長申請を行うこととなった。 具体的には、まずDMDの性能確認のためのデモの都合がなかなかつかなかったことと、UV対応としたことなどにより、製作期間が予想以上に長くかかってしまっていることが挙げられる。DMDは本研究の中心的デバイスであるため、確実な成果を達成すべく研究期間の延長に踏み切らざるを得なかった。 ただし、その間にDMD以外の部分のシステム構築を進め、光学的な設計と硬化の確認、光源とz軸の同期制御プログラムなどはほぼ完成している。また、硬化させる樹脂の特性把握、および樹脂内部へのPIV用蛍光粒子分散に関しても良い結果が得られており、後はDMDの到着を待ってシステムの完成とそれを用いての目的達成を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
1年間延長した平成25年度(最終年度)の初頭にDMDの納入が予定されており、いち早くシステムの完成に尽力する。その後は研究計画のStageIIを進め、複雑な3次元形状の造形や、ビーズ状硬化物を造形しての固液混相流のPIV計測につなげていく。 最終年度の前半に計画した実験を終え、その後3,4ヶ月の間に成果のまとめ、学術論文執筆もしくは特許申請を行う。残りの期間においては、計画(2-4) の「様々なアプリケーションへの応用検討」を進め、たとえば生体適合性樹脂を用いたドラッグデリバリーシステム用ビーズの生成や、3次元細胞培養床の造形を試みたり、マイクロ流路内に柔軟な膜構造を造形するなどして、高度な機能を持つマイクロチャネルの造形などに発展させていく。 特に生体分野への応用は、近年非常に研究が盛んな再生医療やiPS細胞研究に対して大いに発展性が期待できる分野であり、本研究の継続的かつ広範囲な分野への発展を目指していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1年間延長した平成25年度(最終年度)初頭のDMD購入に研究費のほとんどを使用する。残額は樹脂など若干の消耗品購入および、学術論文の投稿費用に充てる予定である。
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