一年延長した本年度の初めに、デジタルミラーデバイス(DMD)を導入した。さまざまなパターンをPC上で作成し、それに拡大・均一化したレーザを照射することで任意のUVパターンを反射させることに成功した。なお、前年導入したレーザのプロファイルを改善するため、レーザ射出直後に空間フィルタを設置し、より強度的にフラットなパターン光の生成に成功している。 UVパターン光の導入は、共焦点スキャナの中間光路に直接導入する方式を採用し、パターンが共焦点光学系を通って対物レンズの焦点に結像することが確認できた。ただし、本方式は非常に緻密な光路のハンドリングを要し、また光路長も長くなってしまうため、装置の移動などが容易にはできない。将来的にはやはり光ファイバで共焦点スキャナ内に導入し、共焦点スキャナ内にDMDを設置する一体型が望ましいと考える。 次に、本装置を用いて流路空間内に充填したUV硬化樹脂にパターン光を照射する実験を、条件を変えて数多く試行した。最も難しい点は、焦点面以外の深さも硬化してしまうことであり、対物レンズの光学特性とレーザ強度、照射時間の主に3つのパラメータに依存する。具体的な値は公表予定ではあるが、基本的に集光性の高いNAの大きいレンズの方が、比較的容易な傾向がみられている。それでも、レンズと共焦点スキャナで規定される共焦点深度より数倍厚い硬化物ができてしまい、中央部が厚くなり易いため、高さを変化させての3次元構造物の製作は非常に難易度が高いというのが現状である。 最終年度の目標である、「マイクロ混相流の計測」および「様々なアプリケーションへの応用検討」については、まず、流れのある流路内での硬化については、硬化する前に下流へ流れてしまう不具合が起き、一時的に静止させるStop Flow法の適用が必須である。また、アプリケーションとしてはキトサンゲルなどの素材を検討中である。
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