研究課題/領域番号 |
23760147
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
三角 隆太 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (40334635)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 撹拌 / 晶析 / CFD / DEM / 結晶摩耗 / 二次核 / ポピュレーションバランス / 固液撹拌 |
研究概要 |
本研究では、化学・製薬・食品工業での代表的な反応・分離操作の一つである晶析操作について、結晶製品の高度な品質予測・制御方法の構築、ならびに生産性の向上を目指して、数値流動解析およびモデル実験を行った。得られた知見は以下の通りである。1.晶析操作における最適な撹拌条件を決定するには、槽底近傍での結晶粒子の浮遊状態を流動状態と関連づけて詳細に把握し、その浮遊メカニズムを解明することが重要である。H23年度は、撹拌槽内の粒子挙動のラグラジアン解析にもとづき、粒子の浮遊メカニズムについて検討した。その結果、撹拌翼設置高さ(液深の1 / 3 または1 / 10)や、邪魔板の有無の違いにより、槽内のフローパターンは大きく変化するものの、槽底に沈降した粒子が槽全体に浮遊するまでのプロセスは共通することを明らかにした。2.晶析操作における核発生の主要な因子と考えられる、結晶粒子と撹拌羽根の衝突現象に関して、撹拌羽根の形状(パドル翼とディスクタービン翼)、羽根幅、回転数が異なる条件において結晶粒子と撹拌羽根の衝突速度と衝突頻度の定量化を試みた。その結果、撹拌羽根の形状などの条件にかかわらず、羽根前面での粒子の衝突頻度は羽根の設置高さに浮遊する粒子の個数で相関できることを明らかにした。3.カリミョウバンの冷却晶析をモデルケースとして、結晶粒子と撹拌翼の衝突により発生する微粒子量を考慮したポピュレーションバランスの解析手法を構築した。4.撹拌槽内での有効核のその場検出手法への適用を想定して、微粒子によるレーザー光線の散乱現象を活用した非接触計測法について検討した。その結果、ポリスチレン微粒子を用いた検定実験データをもとに、溶液中から一次核が逐次的に発生する現象を装置外部から非接触で定量化する手法を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、(a) 数種の撹拌翼形状を対象にした結晶粒子の衝突現象の定量化とそのメカニズムの解明、ならびに(b) 異なる溶液条件下における微小結晶粒子の有効核化率の定量化を目的とした。(a)については、まず槽底から槽全体に粒子が浮遊する過程について、異なる撹拌翼形状における共通するメカニズムを明らかにし、国際会議(ISMIP 7、APCChE 2012)、ならびに国内学会(化学工学会第43回秋季大会、化学工学会第77年会、日本海水学会若手会第3回学生研究発表会)にて成果を発表した。さらに結晶粒子と撹拌羽根前面の衝突頻度が、羽根の形状にかかわらず羽根の設置高さに浮遊する粒子の個数で相関されることを明らかにし、学会(APCChE 2012、化学工学会第14回学生発表会、化学工学会第44回秋季大会(2012年9月発表予定))にて発表し、当初の計画に従いおおむね順調に進展している。(b) については、微小粒子の有効核化率(残存率)の計測に際して必要となる、微粒子のその場計測手法の開発を過去の科研費研究課題(Nos. 16760121, 19760112)から継続して実施し、査読論文(J. Chem. Eng, Japan) として成果を発表した。さらに、当初の計画では平成24年度の課題と位置づけていた(c)結晶粒子の生成・成長・消失を考慮したPopulation BalanceとMass Balanceの錬成解析についても一部を先行して実施し、学会(化学工学会第77年会)にて成果を発表した。 以上のように、おおむね当初の計画通りに順調に研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、(a) 数種の撹拌翼形状を対象にした結晶粒子の衝突現象の定量化とそのメカニズムの解明、ならびに(b) 異なる溶液条件下における微小結晶粒子の有効核化率の定量化に関する検討を進めるとともに、(c) 回分式または連続式冷却晶析操作をモデルケースとして、結晶粒子の生成・成長・消失を考慮したPopulation BalanceとMass Balanceの錬成解析手法の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費のおもな使途は、(i)回分式ならびに連続式晶析装置の作製費と、(ii)研究成果発表のための学会参加のための経費となる。(i) 本研究課題の目的である有効核発生モデルの有用性を検証するためのモデルケースとして、カリミョウバンの冷却晶析操作を取り上げ、モデル実験のための回分式ならびに連続式の晶析装置の作製費の支出を計画している。(ii) 学会参加は、(1) 14th European Conference on Mixing (2012年9月、ワルシャワ開催、発表タイトル「Relation Between Particle Rising Behavior and Liquid Flow Around the Bottom of a Stirred Vessel」)と、(2)日本海水学会第63年会(2012年6月、千葉開催、発表タイトル「撹拌型晶析槽内における槽底からの粒子浮遊メカニズム」)、(3) 化学工学会第44回秋季大会(2012年9月、仙台開催、発表タイトル「数値流動解析を用いた固液撹拌槽内における撹拌羽根への粒子衝突現象の定量化の検討」)の3件を予定しており、関連する旅費、学会参加費、論文投稿料の支出を計画している
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