研究概要 |
沸騰水型原子炉(BWR)の燃料棒周辺では気液環状二相流となるが、限界出力の予測にはその液膜挙動の把握が重要である。これまでも環状二相流の液膜挙動に関する研究は盛んに行われているが、これらは大気圧近傍で行われた実験が多くを占める。BWR(7MPa, 285℃)などの高温高圧条件を対象とする場合、気液の物性値が大気圧近傍でのN2 - Water 系のそれと大きく異なるため、液膜挙動も異なる可能性がある。 森らはこれまで、代替流体を用いた気液の密度比が異なる系に対して定電流法による液膜厚さの測定を行い、同一の管径、液相見かけ速度、気液粘度、表面張力の条件下では平均、最大、最小液膜厚さを気相ウェーバー数WeG で統一的に整理できるという知見を得ている。しかしながらこれらは非加熱系での実験であり、限界出力の予測において重要であるバーンアウトに至るまでの液膜の時空間的特性が得られていない。以上のことから、代替流体を用いて実機BWR の気液の物性値を模擬した加熱系の実験体系において、バーンアウトに至るまでの液膜の時空間特性をより詳細に把握する必要があると考えられる。これらを踏まえ、本研究では常温・低圧下でBWR(7MPa, 285℃)の気液の物性に近い代替流体としてHFC 134a を用いて,鉛直上昇沸騰環状二相流の流動様相を可視化するとともに、レーザーフォーカス変位計(LFD)を用いて液膜厚さの測定を行った。その結果, 高温高圧を模擬した加熱系における平均および最小液膜厚さの測定値は、大気圧下のN2 - Water 系における測定値を含めてWeG で統一的に整理できることが明らかになった。
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