研究課題/領域番号 |
23760160
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 公祐 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60455152)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 流体工学 / 水資源 |
研究概要 |
本研究では,多数の微細孔を有する膜を通すことで汚泥の固形分をろ過して清浄な処理水を得る膜分離活性汚泥法(MBR: membrane bioreactor)における膜の目詰まり防止を目的とした膜下方からの気泡吹き込み部の合理的設計の実現を目標としており,このうち,1.気泡運動に及ぼす懸濁粒子の影響のモデル化およびそのモデルを組み込んだ2.MBR機器内の気泡群を含む流れのシミュレーション技術の開発を目的としている.1については,気泡運動の素過程に懸濁粒子が及ぼす影響を検討するため,気泡観察用小規模水槽にて直径数十マイクロメートルのPMMA(ポリメタクリル酸メチル)粒子液中気泡運動を観察し,観察上の課題を抽出するとともに,上昇運動に関する知見を取得した.また,気泡同士の合一挙動に及ぼす粒子の影響を検討するための数値実験ツール基盤整備のため,埋め込み境界法および二緩和時間粒子衝突モデルに基づく格子ボルツマン法を開発した.本計算技術の内容をJournal of Computational Multiphase Flowsにて発表した(印刷中).2については,粒子・気泡・自由表面を有するMBR機器内の複雑流動のシミュレーションを実現するため,Tomiyama & Shimadaが提案した多流体モデルと界面追跡法の結合モデルに倣って計算コードを開発するとともに,各種相間相互作用に最新のモデルを導入し,また,高効率な実規模計算に不可欠と考えられる非一様計算格子の機能を付与した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施計画は,1.気泡運動に及ぼす懸濁粒子の影響のモデル化およびそのモデルを組み込んだ2.MBR機器内の気泡群を含む流れのシミュレーション技術の開発から成る.このうち1については,粒子存在下の気泡運動に関する実験データベースの構築のための気泡観察装置の製作および気泡運動に関する知見を取得しており,概ね順調に進行している.また,気泡合一に対する粒子の影響については,気泡界面運動と粒子の相互作用を微視的視点から検討する必要があると判断し,その数値実験ツール整備のため,埋め込み境界法および二緩和時間粒子衝突モデルに基づく格子ボルツマン法を開発した.本成果は国際雑誌にて発表しており,短期に高い成果が得られたと考えている.2については,粒子・気泡・自由表面を有するMBR機器内の複雑流動のシミュレーションを実現するための多流体モデルと界面追跡法の結合計算モデル基盤コードの開発,各種相間相互作用に対する最新モデルの導入,高効率な実規模計算に不可欠と考えられる非一様計算格子機能の付与を実施しており,当初計画に沿って概ね順調に進行できている.
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今後の研究の推進方策 |
気泡合一に及ぼす粒子の影響を検討するための数値実験ツール整備のため格子ボルツマン法に基づく計算技術開発を実施し,一定の成果が得られた.一方,MBR機器内複雑流動シミュレーション技術検証用の混相流動実験装置の製作については,当初計画では本年度終盤に試作する予定であったが,計算技術検証に有用なデータを取得するためには気泡生成部の設計を非常に注意深く行う必要があり,入口部設計に関する予備実験・検討に時間をかけた.そこで,本実験装置の製作を次年度に移行したため,本装置製作用経費が本年度経費から次年度の研究費への繰越分として発生している.ただし,「研究実績の概要」および「現在までの達成度」欄にて報告の通り,本研究の進行は概ね計画通りであり,次年度の実施内容についても計画に沿って進められる見込みである.したがって,各要素研究の実施時期・実施方法には若干の修正が発生することが予想されるが,当初計画には大幅な変更はない.
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次年度の研究費の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」に記述した通り,各要素研究の実施時期には当初計画と若干の前後はあるが,基本的に実施内容の変更はない.したがって,本年度経費の次年度の研究費への繰越分の使用内容は,本年度当初計画の通りとする予定である.すなわち,MBR機器内複雑流動シミュレーション技術検証用の混相流動実験装置の試作および気泡検出装置制作費等として支出する.また,次年度の研究費の使用計画も当初計画の通りであり,実験装置の製作・改良,実験用供試粒子および流体,気泡検出用装置制作費等として支出する.
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