本研究では,多数の微細孔を有する膜を通すことで汚泥の固形分をろ過して清浄な処理水を得る膜分離活性汚泥法(MBR: membrane bioreactor)における膜の目詰まり防止を目的とした膜下方からの気泡吹き込み部の合理的設計の実現を目標としており,このうち,1.水質汚染物質を含む高粘度スラリー中気泡運動のモデル化,及び,2.そのモデルを組み込んだMBR機器内気泡群シミュレーション技術の開発を目的とした.(1)気泡の観察実験を実施するとともに,汚染系気泡の数値シミュレーション技術を開発し,これを用いて気泡運動を検討した.その結果,MBR機器内に現れる数mmから数十mm程度の気泡の抗力や揚力を評価する際は清浄系気泡用モデルにおいて表面張力に対する水質汚染の効果を考慮すればよいことを明らかにし,その効果を考慮したモデルを提案した.また,気泡運動に懸濁粒子が及ぼす影響を検討するための数値実験ツールとして昨年度に開発した埋め込み境界法及び二緩和時間粒子衝突モデルに基づく格子ボルツマン法を改良した.(2)スラリー系気泡流・自由表面を有するMBR機器内の複雑流動のシミュレーションを実現するため,Tomiyama & Shimadaが提案した多流体モデルと界面追跡法の結合モデルに倣って計算コードを開発し,相間相互作用に関する各種モデルとともに(1)で提案したモデルを導入した.また,懸濁粒子が気泡合体に及ぼす影響を検討し,Ojimaらのモデルを導入することで計算手法にその影響を取り込んだ.高効率な実規模計算に不可欠と考えられる非一様計算格子の機能も付与した.本計算技術により気泡の散気シミュレーションができることを確認した.
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