研究課題/領域番号 |
23760162
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
本澤 政明 東京理科大学, 理工学部, 助教 (50516185)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 磁気機能性ナノ流体 / 磁性流体 / 伝熱促進 / UVP / 強制対流熱伝達 / 流動抵抗 |
研究概要 |
本研究では,磁気機能性流体として内部粒子が10 nm程度の磁気機能性ナノ流体を取り上げ,磁場による流動と伝熱の同時制御を目的とした基礎研究として,印加磁場下の流動特性と伝熱特性の変化を併せて計測した。本年度は,実施計画に基づき,磁気機能性ナノ流体の層流,乱流の流動下における,(1)熱伝達に及ぼす磁場の影響,(2)差圧による流動抵抗の計測と磁場の影響,(3)超音波による流速分布測定装置UVPによる流速分布計測と磁場の影響を調べた。この結果,下記のような成果が得られている。(1)熱伝達特性:層流下では磁場印加により磁場印加部において40%もの熱伝達の促進が得られた。しかしながら同じ層流下でも流速を早く(レイノルズ数を大きく)すると熱伝達の促進にはより大きな磁場をかける必要があった。一方で,乱流下においては,磁場印加により熱伝達はわずかに抑制されてしまった。これは,磁場によって,乱流拡散が抑えられたためである(流速分布計測で確認)。(2)流動抵抗:磁気機能性ナノ流体の流れに磁場を印加すると層流下,乱流下においても流動抵抗は増加した。現状の下面のみの加熱条件では,層流下で熱伝達の促進以上に流動抵抗が増大してしまっていた。しかしながら,このように印加磁場下の流動抵抗と熱伝達を定量的に評価した例はこれまでに申請者の知る限りでは報告が無く,重要な成果の一つである。(3)速度分布計測:磁気機能性ナノ流体は不透明流体で,内部に強磁性微粒子が混入されているため,光学的な手法による速度分布の適用ができず,超音波を用いた手法であるUVPによって速度分布を計測した。この結果,層流下,乱流下共に磁場方向に関係した特徴ある流速分布が捉えられ,熱伝達特性の考察においても貴重なデータとなった。磁気機能性ナノ流体の速度分布計測に関しては,これまでに実施された例がわずかしか無く,重要な成果の一つである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状では,当該年度実施計画に記した印加磁場下の磁気機能性ナノ流体の熱伝達特性の計測に加えて,次年度の実施予定であった流動抵抗の測定,UVPによる流速分布測定が実施できており,おおむね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
実施計画に記してあるように,磁気機能性ナノ流体の流動特性,熱伝達特性を磁場印加条件等を変化させるながら,引き続き測定を続ける。これに加えて,磁気機能性ナノ流体の熱物性,磁場印加時の流体の力学的特性を精密に測定し,現象のメカニズム解明に迫る。また,得られた成果を13th International Conference on Electrorheological Fluids andMagnetorheological Suspensions (ERMR2012)等の国際会議,国内学会で発表予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度初期にこれまで検討していた磁気機能性ナノ流体の熱伝導率測定装置,微差圧測定装置を購入すると共に流路の改良を行う予定である。この購入に当該年度未使用の研究費,次年度で計画している備品費を充当する予定である。その他,研究計画に記したとおり,磁気機能性ナノ流体,センサー等消耗品の購入,国内外会議への参加,成果発表を実施する予定である。
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