研究概要 |
初年度より精密濾過を観察するために設計した試作流路で懸濁液の流量と圧損の関係を調べてきたが, 流路入口で自発的に発生する渦の影響, ポンプから伝わる拍動などによる時間変動、また, 流路に固定された膜の微細な揺れなどの要因などが互いに影響しあい, 試作流路内の流れは単純な定常平行流とはならない. 流路を長くしたり膜を網目状の支持板で固定するなど工夫を行ってきたが, 研究期間内に当初期待していた実験について十分な成果を期間の延長をもってしても得られなかった. 一方, これとは並行して行ってきた剪断流における不安定定常解のレイノルズ数依存性に関する理論的計算については, 一定の成果が得られた. スパン方向に鏡像対称性を有する定常解と非対称な定常解について, それらと層流解との間の距離(L2ノルム)を比較した. レイノルズ数(Re)の増加に伴い, 前者の距離は後者の距離に比べて比較的速く0に漸近することが, Re<10^5程度の範囲で確認された. この結果は, 従来, 定常解と層流の距離は高レイノルズ数で有限値に近づくとされてきたことや, 層流解の線形安定性の結論などとは対照的であり, 一見矛盾もしているように思える. また, 前者は相空間内で乱流状態と層流状態の境界を形成している. これらのことは, 鏡像対照性を有する定常解が, 高レイノルズ剪断流れの乱流遷移プロセスにおける重要な指標となることを示している. これらの結果は2013年度開催の国際学会で発表し, PRL誌上で報告を行った.
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