せん断流動影響の小さな平面伸張流動場を作り出す目的でシースコア流れを用いる手法を提案した.シースコア流れとは,伸張変形を加える流体(コア流体)を挟み込む形でシース流体を流動させ,コア流体とシース流体の合流部分で平面伸張流動を発生させる方法である.伸張流動を作るには縮小流路を用いるのが一般的で,流路断面積を流動方向に向かって小さくすることで伸張流動を発生させる.本手法は,この縮小流路をシース流体で作ることでコア流体に伸張流動を加える.この手法の利点は,壁面でのせん段流動の影響を低減させることが可能であり,小さな流路でも試料の伸張流動特性が評価可能である. 今年度は,本手法で壁面の影響低減の評価および高分子融液での実証試験を実施した.壁面の影響低減評価効果の確認は,粘弾性を持つ界面活性剤水溶液をコア流体,シース流体に水あめ水溶液を用いて,平面伸張変形を加えた場合のクロスニコルによる偏光観察よりミセルの配向状態を調査した.その結果,伸張後では,流路の中央部分を流れる流体とコア流体の最も壁に近い流体とではミセルの配向状態に差が無いことが確認できた. 実証試験では,まず高分子のペレットからインゴットを作成する装置を作製した.高分子インゴットを流路に充填し,カートリッジヒーターと高温循環恒温槽オイルを循環させて流路を加熱し,高分子インゴットを溶融状態にした.その後,シース流体,コア流体の順で流動を開始させ,合流部分の観察を行った.その結果,コア流体の流動は確認されたものの,流動条件コア流体がシース流体側へ逆流したことが観察された.冷却後の試験片を確認したところ,合流前後で幅に変化が見られなかったことから,今回設定した条件下では伸張流動の形成できなかった.しかしながら,この点についてはコア流体の流量を調整することで改善が可能であり,当初の目的は概ね達成された.
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