研究課題/領域番号 |
23760171
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
廣田 光智 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50333860)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 熱工学 / 省エネルギー / 超音波 / 希薄燃焼 / 可視化 |
研究概要 |
本研究は,二つの異なる周波数の超音波効果の融合による,希薄燃焼限界(通常は燃料濃度が薄く火が消える)条件での安定かつ継続的燃焼が目的である. 初年度である平成23年度は,1.2系統超音波燃焼制御装置の構築,2.2系統超音波燃焼制御装置による火炎の安定限界の測定,3.周囲温度の変化に対する超音波燃焼制御装置1系統の有効範囲の検証,4.アセトンOH同時PLIFによる希薄燃焼の可視化(1系統による)を行なった.以下に各項目の実績を報告する. 項目1は,ほぼ完了した.項目2は,進行中である.まず構築した2系統目の超音波燃焼制御装置の性能を評価した.燃料流量を固定し,酸化剤流量を増加させて,噴流火炎の浮き上がり,吹き飛びなどの安定限界を観察した.その結果,既存の装置とほぼ同等の傾向を得た.ただし,振動子個体差により若干の超音波効果の違いがあり,完全には一致しない.各個体差を考慮した運転方法が必要である.また2系統同時に作用させたときの安定限界の測定は,現在進行中である.当初の予測通り,超音波振動面および作用面の設置位置によって,火炎に及ぼす影響が大きく異なり,安定限界が低下する条件も見つかった.そこで安定限界を維持しつつ,2系統とも火炎に有効に作用させることができる最適な位置を検討している.項目3.は,ほぼ完了した.装置を改造し,ヒータにより気流温度を+50度~100度変化させ,1系統のみでの安定限界を測定した.当初の予測通り,温度変化による音速の変化で,共振周波数がシフトし,超音波効果が急激に低下する傾向が見られた.ただし,温度に対する制御装置の有効範囲は,運転状態によって異なるため,継続的に検討する.項目4.は,ほぼ完了した.アセトンOH同時PLIFにより可視化される予熱帯の幅は,超音波の効果により拡大していることがわかった.このとき各発光境界位置と計測画像枚数の決定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように,初年度に実行予定であった4つの項目のうち,項目1,項目3,項目4の3つは,ほぼ完了した.ただし,項目3では,周囲温度の変化に対して制御装置の有効範囲を決定する必要がある.燃焼器の運転状態(噴流流速,周囲温度,超音波制御装置位置など)により効果が大きく異なることが判明したため,現在,的確な条件を検証している.また項目2において,超音波の照射の有無による効果の違い,噴射流量の変化に対する効果の違い,1系統照射する場合の振動面および反射面の的確な位置の決定は,完了した.その結果,超音波の照射により希薄可燃限界が拡大する.また燃料噴射流量が多くなる場合,超音波の効果が弱くなる.ただこの場合,本研究の目的である希薄燃焼状態とは反対の条件であり,対象外とした.1系統のみ照射する場合,超音波の振動面と反射面は正対させ,噴流出口直後に作用させる方法が効果的であった.これは浮き上がり火炎の火炎高さが有限であるうえ,超音波の効果をできる限り上流から付加する必要があるためと考えられる.2系統同時作用の場合は,装置の制約上,正対させる位置がずれるため,超音波の効果が火炎にうまく作用しない条件が見つかった.この的確な設置位置が決定した後,周波数や位相を変化させて効果を検討する予定である. 以上,4つの項目のうち3つをほぼ完了し,進行中の項目も問題点が明らかなことから,当初の予定の80%を達成したと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初申請通りに推進する.すなわち,平成24年度は,1.周囲温度の変化に対する超音波燃焼制御装置2系統の有効範囲の検証,2.アセトンOH同時PLIFによる希薄燃焼の可視化(2系統制御装置による),3.CFDによる予測の各項目を順次行い,4.2系統超音波装置の最適周波数を決定する.ただし,研究実績の概要に記したように,初年度の問題点として,2系統それぞれの装置の配置の難しさが挙げられたため,この最適化を同時進行で進める.これらの成果をまとめ,発表・報告する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実績の概要に記したように,2系統それぞれの装置の配置を検討している.そのため,当初予定した2系統同時照射による火炎の安定限界に関する実験が完了していない.この実験で使用する予定の消耗品(空気ガス,メタンガス,光学系)の購入が持ち越されたため,次年度への繰越金が発生した.繰越金は上記の消耗品として使用し,完了していない実験を推進する予定である. それ以外の研究費の使用計画は当初の計画通りとする.
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