本研究は,二つの異なる周波数の超音波効果の融合による,希薄燃焼限界(通常は燃料濃度が薄く火が消える)条件での安定かつ継続的燃焼の実現が目的である. 現状では気流温度変化により音速が変化することで定在波の周波数が若干ずれ,火炎を安定化する効果が急激に低下するおそれがある.本研究では,超音波による燃焼制御装置を2系統用意し,それぞれ高温度対応の周波数,低温度対応の周波数に設定することで,気流温度が変化して一方の超音波の効果が減衰しても,増幅するもう一方の効果で補いたい. 23年度は,主に2系統の超音波燃焼制御装置の設計製作と,ヒーターによる気流の加熱を行った.まずは超音波燃焼制御装置1系統の作用によって火炎が安定化する効果が,気流温度の変化に対して減衰する傾向を検証した.その結果,気流が加熱されると急激に火炎の安定限界が低下することがわかった.これは定在波の腹と節を決定する音速が周囲温度の変化に従ってずれるため,火炎の安定化に最適な定在波照射位置が変化するためである. 24年度は,主に2系統の超音波燃焼制御装置の同時作用による効果の増幅の検証を行った.まずは常温において超音波燃焼制御装置2系統を十字型に配置し,一方の設置位置を高さ方向にずらして,安定限界が最も拡大する位置を決定した.ただし,指向性の高い超音波であっても実際には音の干渉が起こり,効果の増幅されるところあるいは打ち消されるところが存在した.したがって超音波の2系統同時の照射方法には検討の余地がある.また,気流を加熱した状態で超音波燃焼制御装置を2系統同時に作用させた結果,異なる周波数を設定することで1系統では得られなかった火炎の安定限界の拡大効果を得た.ただし,常温時と比較して超音波の効果は全体的に減衰しており,定在波の音圧レベルを上げる工夫が必要であることがわかった.
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