研究課題/領域番号 |
23760173
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
大上 泰寛 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (00375122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エタノール / 層流燃焼速度 / 化学反応機構 |
研究概要 |
平成23年度は,燃料としてエタノールを選択し,反応解析汎用コード「CHEMKIN PRO」を用い,当量比,圧力,混合気温度,希釈率に関し種々の条件下においてエタノール層流燃焼速度の計算を行い,混合気の条件が層流燃初速度等のエタノール予混合火炎の特性値に及ぼす影響について調べた. また,感度解析,反応経路解析も行い,エタノール燃焼反応メカニズムについて調査を行った.その結果,エタノール燃焼反応においては,エタノールの酸化過程の最終段階に位置する素反応である CO + OH = CO2 + H が最も大きな影響力を有することが分かった.これらの得られた数値解析結果を用いて,測定を行う実験条件についての検討を行った. さらに,汎用流体解析コード「FLUENT」を用いて二次元ブンゼン火炎の数値計算を行い,実験に用いることを予定している層流燃焼速度の測定手法の妥当性に関する検証を行った.この数値計算は,本研究における実験で対象とする二次元矩形バーナー上に定在化された予混合火炎を模擬したものであり,火炎から壁面への熱損失や壁面付近での速度境界層の影響を調査するために行ったものであるが,計算結果より,火炎中に熱損失や速度境界層の影響が極小となり断熱火炎とみなせる領域が存在することがわかった.すなわち,バーナー火炎を用いることで,断熱一次元平面火炎の特性値である層流燃焼速度が高精度で測定できることが示され,今後予定している実験における測定結果の妥当性を検証することができた. その他の測定に関しては,一酸化炭素や窒素酸化物の濃度が計測可能な燃焼ガス分析計を購入し,燃焼ガス測定系の構築を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では層流燃焼速度の測定が最も重要な要素の一つとなっているが,数値計算を用いた化学反応機構の事前調査や実験条件の選定などが終了した.ただし,研究代表者の異動により,当初予定していた高圧下での実験について,実験条件の範囲が限定されることが想定されるが,混合気の希釈条件等を幅広く変化させる等の工夫により,高圧と同様の実験条件を作り出し,実験を行う予定であることから,研究は概ね当初の予定通りに進行しているといえる. また,当初の研究計画では,濃度計測としてガスクロマトグラフィーを使用する予定であったが,代わりに燃焼ガス分析計を購入し,窒素酸化物や一酸化炭素の濃度に着目することとした.これに関しても,概ね当初の予定通りの進捗状況と言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度については,第一段階として,平成23年度に得られた成果を基にして決定した実験条件に合わせ,実験装置の改修を行う予定である.続いて,実験装置の構築が完了し次第,実際に層流燃焼速度や燃焼ガス濃度の計測を行う予定である.その際,水蒸気や二酸化炭素等の希釈が層流燃焼速度や排ガス特性に及ぼす影響に着目するため,できるかぎり広範な希釈濃度条件下において実験を行うつもりであるが,とりわけ,希釈により模擬高圧環境を再現できるような高濃度希釈条件を重点的に取り組む予定である.さらには,実験データを数値計算結果と比較することにより,現存する化学反応機構の検証を行うほか,数値計算を用いた化学反応機構の解析により,希釈が予混合火炎の燃焼特性に及ぼす影響について詳細なメカニズムの解明を行ってゆく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に関しては,実験装置の改修を行うことから,バーナーの新造,熱交換機・蒸発装置の改良,ガス・液体供給・制御系の構築等,実験に必要な消耗品の購入に研究費を使用する予定である.また,燃料,希釈ガス等についても購入する必要がある. また,平成23年度と同様,数値解析に必要な化学反応解析コード「CHEMKIN PRO」のライセンス購入費が不可欠である. さらに,これまで得られた成果の成果発表および今後の研究遂行において必要な情報収集のため,国際学会に参加することを予定しており,そのための旅費として研究費を使用する予定である.
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