バイオマスなど含水率の高い試料を利用するためには、前処理として乾燥が必要である。 しかし水の蒸発潜熱(気化熱)が大きいことから、乾燥には非常に多くのエネルギーが必要になる。このため省エネルギーな乾燥プロセスが求められる。これまで、省エネルギー乾燥方式として、乾燥後に発生した水蒸気を断熱圧縮し蒸発潜熱を利用する蒸気再圧縮法(MVR: Mechanical Vapor Recompression)が行われているのに対し、我々が開発した自己熱再生方式(SHR: Self-Heat Recuperation)では、水蒸気―空気の混合気体を圧縮することにより蒸発潜熱と顕熱の両方を回収できることから、MVR乾燥方式よりもエネルギー消費量を削減可能である。しかし、これまでSHR方式で乾燥に必要な空気量が最適化されておらず、またMVR方式に比べてシステムが複雑になるという問題があった。 そこで、本研究では、SHR乾燥プロセスの実現化と更なるエネルギー消費の削減を目的として、これまでのSHR乾燥プロセスを簡略化したプロセスを提案した。提案したプロセスにおいて、プロセスシミュレータを用いて、各空気流量での水分1 kgの蒸発に必要なエネルギー量 (kJ/kg-H2O)を算出し、従来の熱回収型乾燥プロセスや、MVR方式による乾燥プロセスと比較した。 その結果、SHR乾燥プロセスでは、試料の予熱に用いる熱交換器を削除し、空気流量を最適化することで、エネルギー消費を474 から 147 kJ/kg-H2Oに大幅に削減することに成功した。これは、従来の熱回収型乾燥プロセスのエネルギー消費(2410 kJ/kg-H2O)と比較してわずか1/16、MVR乾燥プロセスと比較して3/5である。また、空気流量が少ない時には、膨張器を削除することにより更なるプロセスの簡略化と省エネルギー化を図れることを明らかにした。
|