本年度はループ管と共鳴管で構成された熱音響ヒートポンプを設計・製作し,さらに加熱可能温度と成績係数(加熱量/入力(音響)仕事)を測定した.100℃以上での加熱量測定のため,油を熱媒として使用した.(なお,油を循環させるポンプの利用限界より,150℃までの加熱量を測定した.) 測定の結果,製作した熱音響ヒートポンプは300℃以上の温度差を作り出すことが可能であることが分かった.また,高温熱浴の温度が150℃の時,成績係数が1.1となった.また,高温熱浴温度が100℃から150℃まで変化しても,成績係数は0.1程度しか低下しなかったため,200℃以上の温度でも有用な加熱量が得られることが分かった.このような大きな温度差(300℃以上)を生み出す熱音響ヒートポンプの開発は世界初であり,100℃以上の温度での成績係数測定も本研究で世界で初めて実施された.これら研究成果の一部は投稿論文に発表し,また国際・国内会議においても発表を行った. 低温熱源の温度を変化させた場合の実験も行った.(上記実験では低温熱源として10~20℃の冷却水を利用.)その結果,低温熱源温度を20℃から80℃に上昇させると,150℃での成績係数が0.1程度上昇した.これにより,低温熱源と高温熱浴の温度の差にヒートポンプの性能が依存することが示され,排熱を低温熱源として利用し,排熱の温度を上昇させる熱音響ヒートポンプの可能性が示された.
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