研究課題/領域番号 |
23760187
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
下栗 大右 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40432687)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 燃焼 / マイクロ燃焼器 / 渦流 / 消炎直径 |
研究概要 |
本研究では,細管内における「ボルテックス・バースティング(渦流による高速火炎伝播)」について,(1)発生限界を定量的に求めた後,(2)伝播開始や消炎のメカニズムを明らかにし,さらには,(3)小型発電システムの試作・評価を行う.以下,進捗状況を記す.(1)細管内におけるボルテックス・バースティングの発生限界を定量的に求める.:従来は,メタン空気混合気では,3.2mm以下の管内で火炎を伝播・安定化させることは不可能とされていた.本研究では,これまでに,ボルテックスバースティングによって内径2.4mmの管内で火炎が伝播・安定化可能であることを明らかにした.さらに,本研究では,混合気中の不活性ガスをAr,He,CO2として実験を行っている.酸化剤中の不活性ガスを炭酸とした場合,酸素濃度21%では,従来,燃料濃度9.0%のみで火炎伝播可能であることが知られていた.ところが,ボルテックス・バースティングを利用すると,燃料濃度が7%から12%まで広範囲において火炎が伝播可能であることが判明した.一方で,酸化剤中の不活性ガスをヘリウムとすると,従来,燃料濃度が4.8%から16.1%まで伝播可能であるのに,渦流中では伝播不能となることが判明した. (2)細管内におけるボルテックスバースティングメカニズムの解明 :上記伝播限界は,未燃混合気の不足成分のルイス数によって整理できることを明らかにしつつある.例えばルイス数が1より小さいガスでは,渦流によって可燃範囲より広い範囲で伝播可能となり,ルイス数が1より大きいガスでは伝播範囲が大きく狭まる.このことは,渦流中での火炎伝播には,選択拡散効果が大きく影響していることを示唆している.(3) 小型発電システムの試作・評価 :初年度は,申請の通り基礎研究を重点的に行った.今年度は基礎研究に加え,小型発電システムの試作・評価を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)発生限界を定量的に求める : これまでに,メタン・プロパンを燃料として,多くの混合気条件(酸素濃度,不活性ガス種)に対してボルテックスバースティングの発生限界を求めた.特にメタン-空気混合気や,メタン-炭酸ガス-酸素混合気において,従来(渦無し流れ)では火炎形成が不能とされている細管内においても,渦流によって火炎が伝播・安定化可能であることを明らかにした.このことは,学術的のみならず,安全工学の観点からも重要な意義を持つ.(2)伝播開始や消炎のメカニズム : 本研究によって,ルイス数が1より小さい場合,渦流中を伝播する火炎の先端が強められ,通常(渦無し)の場合の可燃限界を超えた条件でも火炎伝播が可能となること,その一方で,ルイス数が1より大きい場合には,可燃限界に達する前に火炎伝播不能となることが判明している.さらには,このボルテックスバースティングにおけるルイス数の影響が,定量的に明らかにされつつある.この点は,研究代表者の予想以上に進捗している.(3)小型発電システムの試作・評価 : この点に関しては,申請の通り,初年度での成果はほとんど無い.申請の通り,今年度,重点的に行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
(1)発生限界を定量的に求める : これまでに,メタン・プロパンを燃料として,多くの混合気条件(酸素濃度,不活性ガス種)に対してボルテックスバースティングの発生限界を求めてきた.今後は実用を視野に入れ,より比エネルギーの高い液体燃料(アルコール・灯油等)に対しても同様の実験を行っていく.(2)伝播開始や消炎のメカニズム : これまでに,ボルテックスバースティングでは,ルイス数に代表される選択拡散の効果が重要であることが判明していることから,今後は,混合気中の希釈剤に2成分用いるなどの手法によって(例:燃料+酸素+窒素+炭酸ガス),混合気のルイス数を様々に変化させ,実験を行っていく.(3)小型発電システムの試作・評価 : これまでに,発電に用いる熱電素子の選定が終了している.今年度はそれを用い,発電を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は,申請の通り,基礎研究に加えて,発電システムの試作・評価を行う.さらに,国内・国際学会での発表を行う.ほぼ申請の通り,研究費を使用する予定である.
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