研究課題/領域番号 |
23760188
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 修平 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379899)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 伝熱促進 |
研究概要 |
水素自動車実現への課題の一つとして充填層の有効熱伝導率の低さがある。単層カーボンナノチューブを充填層粒子に直接合成することでこれまでボトルネックとなっていた充填層粒子-伝熱媒体間の接触熱抵抗を低減し、よりいっそうの有効熱伝導率の向上を試みた。充填層粒子としては直径が8-12 umのアルミナ粒子を採用したが、これは水素吸蔵合金が吸蔵容器内で用いられるときの大きさに相当している。触媒金属を含浸法によりアルミナ表面に担持した後、化学気相蒸着法(CVD)によりカーボンナノチューブを合成した。ラマン分光によるカーボンナノチューブの分析結果では単層カーボンナノチューブの存在が予想されるが理想的な状態で行ったCVDにより合成された物と比較すると室の面ではかなり劣ると予測される。このように作成された試料を充填層粒子とし、有効熱伝導率を測定した。有効熱伝導率測定装置は内径20 mm程度のアクリルパイプ内に2つのステンレス製の円柱ブロックを挿入し、このブロックで挟む形で充填層を実現した。円柱ブロックは軸方向に10 mm間隔で熱電対が挿入されており温度差を測定することができる。アクリルパイプ周囲は断熱材により充分断熱されている。ステンレスブロックの上下を熱伝導率の高い銅ブロックを設置し、その上下をペルチャ素子で加熱・冷却することで一次元の系を実現している。これにより充填層の有効熱伝導率は既知のステンレスの熱伝導率により求めることができる。現時点での結果として、充填層粒子の空隙に対して7 Vol.%程度のCNTを合成することに成功した。これによりアルミナだけの充填層に比べて有効熱伝導率が0.28 W/mKから0.83 W/mKに上昇した。内部の流体は空気であり、Kunii-Smithの式により有効熱伝導率を推算すると0.29 W/mKになることから測定精度は非常に高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在装置は完成し、十分な測定精度で測定が行えることが分かった。充填層粒子に関しても本研究で用いたアルミナは単層カーボンナノチューブ合成に関して理想的な粒子ではないもののある程度のCNTを合成することができている。有効熱伝導率の向上も確認できていることから現時点での到達度としては計画通りであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は充填層粒子に直接合成するCNTの量を変化させ、空隙への充填率の変化が有効熱伝導率の向上に及ぼす効果を定量的に明らかにする。またCNTの品質が与える影響に関しても充填層粒子をアルミナから単層CNT合成に適したゼオライトに変えることで検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
測定装置、CVD装置が完成していることから、今年度の研究費は薬品・ガスなどの薬品類、熱電対破損、装置維持などの消耗品が主たる使用用途となる。また結果を出ていることから成果発表も積極的に行う予定である。
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