研究課題/領域番号 |
23760191
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西山 貴史 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80363381)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 熱ダイオード / 組成傾斜 / 薄膜 / 高重力場 / レーザーアブレーション |
研究概要 |
薄膜の面内熱伝導率を正確に計測するためには、測定したい対象物のみを架橋状態にすることが望ましい。本研究ではMEMS技術によりSi窒化膜のみを残した状態とした基板の上に組成傾斜薄膜を作製する。窒化膜の厚さは100 nm以下であり、サンプルの膜厚500 nm~1 μmに対して熱的に十分薄いため、薄膜の熱伝導率計測にはほとんど影響を及ぼさない。また、Si酸化膜よりも窒化膜のほうが強度に優れており架橋構造形成に適している。当研究室は、深い溝を正確に形成する技術や、架橋部分にセンサーおよびヒーターをパターニングする技術など高度なMEMS加工技術を有しており、本研究で要求される複雑な工程にも十分対応可能である。まずは過去に実績のあるSi酸化膜付きのウェハーを用いて、MEMS加工によりセンサーおよびヒーターとして使用できるPt細線の架橋構造を作製した。Pt薄膜は厚さ50 nm、幅10 μmの細線を基本とし、フォトリソグラフィーとリフトオフ法によって作製した。これにより回路の接続を変更するだけで2方向の熱伝導率計測が可能となる。また、申請者らが開発した重力場支援レーザーアブレーション法を用いて組成傾斜薄膜を作製し、その面内の熱伝導率を計測して組成傾斜による熱整流作用を調査するのが本研究の目的であり、これまでに5,400 Gの重力場下でFe/Si、Al/Cuなどの組み合わせにおいて組成傾斜膜ができることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重力場支援レーザーアブレーション法により様々な2元素の組み合わせにおいて組成傾斜薄膜が作製できることが確認できており、MEMS技術によるセンサー作製に関しても特に問題点はなく、本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
組成傾斜薄膜を構成する2元素の原子量差が大きいほど熱整流作用も大きくなると考えられる。よって、軽い元素と重い元素の組み合わせとしてB-Biの組成傾斜薄膜の作製実験を行う予定である。重い元素であるBiリッチ側と、より軽いBリッチ側が生成され、理論的にはB → Biよりも、Bi → Bへの熱伝導のほうが大きくなることが予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な消耗品等の物品費、サンプル評価のための共同利用設備使用料(SEM-EDXなど)、および成果発表費用等として使用する予定である。
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