燃焼場のような高温ガス流動場における温度・速度同時計測は,伝熱現象を把握する上で非常に重要である.そこで本研究では,蛍光物質からの蛍光発光特性が温度に強い依存性を示すことに着目し,蛍光体微粒子を散布した高温ガス流中に励起光を照射することで,微粒子から得られる蛍光発光の測定・分析から空間温度分布を推定し,さらに微粒子の移動挙動からガス流の速度測定を行う非接触二次元温度・速度同時測定法の開発を目的とし,検討を行なった.まず,対象とする温度域として高温場を想定しているため,高温状態でも良好な蛍光発光の温度依存性を示す蛍光微粒子の合成・開発を行い,常温から1200K程度までの範囲で温度測定が十分に可能な数種の蛍光体微粒子の創製に成功し,その蛍光発光の温度依存性について詳細に明らかにした.次に,実際に高温ガス噴流中に蛍光体微粒子を散布し,励起用シート光の照射によって得られる微粒子からの二次元平面蛍光発光分布をステレオスコープ型受光カメラを利用して異なる二波長で同時に撮影・計測し,その蛍光の二波長強度比から二次元温度分布を算出した.本手法から得られた温度分布について,別途熱電対により測定された温度分布と比較・検証を行なったところ,本手法においても良好なガス噴流の温度分布が計測可能であることが示された.また,上記の温度測定と同時にレーザー光照射によって得られた粒子像の移動距離から速度算出を行なったところ,噴流中での妥当な速度分布を取得することができ,対象とするガス流の速度測定も可能であることが明らかとなった.最後に,現在,燃焼ガス流中における本手法の適用性について継続して検討を実施しているが,燃焼反応場付近では粒子からの蛍光が微弱であり精度の良い温度測定には未だ難があること等の問題点も明らかとなっており,今後,使用する粒子の再選定や受光系の改善等によってさらに開発を進めていく予定である.
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