ナノ・マイクロサイズの微細な凹凸を有する多孔体を施した伝熱面(ナノ・マイクロ構造伝熱面)は、流動抵抗を増加させずに伝熱性能を向上させる革新的な伝熱促進技術として注目されている。しかし、従来のナノ・マイクロ構造伝熱面の創生技術を高温かつ腐食環境で使用される炭化ケイ素(SiC)へ適用した場合、母材と多孔体の熱膨張差による割れ、剥離や高温環境での多孔体微細構造の劣化が生じる。本研究では、SiCに適用できる新規ナノ・マイクロ構造伝熱面創成技術を開発することを目的として、SiC表面にカーボンナノチューブ(CNT)を形成できるSiC表面分解法による創生方法とSiCの多孔体と緻密体を接合した複合材による創生方法を用いてナノ・マイクロ構造伝熱面を試作し、その伝熱促進効果を評価する。今年度は、SiCの多孔体と緻密体を接合した複合試験片を試作し、表面観察、加熱試験、水を冷媒とした平板体系の対流伝熱試験を実施した。また、昨年度製作したCNTによるナノ・マイクロ構造伝熱面について、対流伝熱試験の試験条件等を見直し、再試験を実施した。 試作した複合試験片の表面観察では、数十μmの空孔を持つ多孔質体が伝熱面に形成されていることが観察できた。加熱試験では、いずれの複合試験片についても800℃まで割れ等が発生せず、健全であることが確認できた。また、対流伝熱試験では、試作した複合試験片についてはナノ・マイクロ構造伝熱面による伝熱促進効果は確認できなかったが、昨年度試作したCVD-SiC表面に形成した親水性を示すCNTによるナノ・マイクロ構造伝熱面のみ伝熱促進効果が確認できた。
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