研究課題/領域番号 |
23760198
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
狩野 祐也 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (90510040)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 音波 / 電磁波 / 音速 / 粘性 / 熱伝導率 / 誘電率 / 共鳴 / キャビティ |
研究概要 |
初年度は,気体試料の音速,粘性,および熱伝導率の同時計測を目指して,円筒型キャビティを用いた音波共鳴測定装置を開発した.円筒型キャビティの材料はSUS304製であり,キャビティ内径35mm,キャビティ長さ50mmである.円筒軸上の両端面にはコンデンサマイクロホンが取り付けられており,サンプルガスが充填されたキャビティ内での音波共鳴特性を測定することができる.サンプルガスの音速は音波共鳴周波数から求めることができ,一方で音波共鳴特性の半値幅は音波の減衰を表しているため,サンプルガスの粘性や熱伝導率と密接に関係した値となる.円筒型キャビティ中での音波共鳴は,円筒長さ方向に定在波の節があるlongitudinal modeと,円筒径方向に定在波の節があるradial modeが観測される.これら2つの共鳴モードにおける半値幅を測定して比較することで,粘性および熱伝導率をそれぞれ求めることが可能となる. 物性がよく知られているアルゴンをサンプルガスとして,開発した円筒型キャビティを用いた音波共鳴測定装置により予備的測定を行った.得られた測定結果を解析したところ,音波共鳴モード間のばらつきが予想よりも大きかったものの,本研究で提案する測定原理による音速,粘性,および熱伝導率測定の妥当性を確認することができた.上記の測定結果については,2011年8月にギリシャで開催されたThe 19th European Conference on Thermophysical Properitesにおいてポスター発表を行った. また,次年度は円筒キャビティ内における電磁波共鳴測定の追加を計画しており,装置改良へ向けた設計や測定機器の選定を進めた.この改良により,音速,粘性,熱伝導率に加え,サンプルガスの誘電率も測定できるようになる見込みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では音波と電磁波を用いた気体試料の多重物性計測法の確立を目標としている.今年度は円筒型キャビティを用いた音波共鳴測定装置を開発し,アルゴンをサンプルガスとした予備測定により,音速,粘性,熱伝導率の多重物性計測法の妥当性を確認することができた.誘電率測定のための電磁波共鳴測定への装置改良は進行中であるが,ほぼ当初の計画通り進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現状の音波共鳴測定に加え,今後は円筒型キャビティ中での電磁波共鳴測定も行えるように装置の改良を行い,サンプルガスの誘電率の測定を試みる.この改良により,気体試料の音速,粘性,熱伝導率,誘電率の多重物性計測手法の確立を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は円筒キャビティを用いた音波共鳴測定装置の開発に注力したが,次年度は円筒型キャビティ中における電磁波共鳴測定による誘電率計測を計画している.次年度使用額は,この電磁波共鳴測定のための装置改良費用として使用する.
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